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2014年2月24日 「図書館の民間会社による管理・運営に関する意見・要望」の送付について(海老名市・多賀城市あて・要旨)

平成26年2月24日
各 位
図書館友の会全国連絡会 代表 福富洋一郎

「図書館の民間会社による管理・運営に関する意見・要望」の送付について

私たちは、公立図書館が「地域の知の拠点」として発展することを願い、全国各地で活動する市民団体・個人の連絡組織です。本日、別紙の通り神奈川県海老名市と宮城県多賀城市の市長と教育委員長に対し「図書館の民間会社による管理・運営に関する意見・要望」を提出しました。

佐賀県武雄市図書館は、昨年4月にカルチュア・コンビニエンス・クラブ社(CCC)を指定管理者とする図書館としてリニューアルオープンしました。書店とCD/DVDレンタルショップ、コーヒー店(スタバ)を配置することにより入館者を増やし、このことは全国的に注目を集めています。そして海老名市、多賀城市、山口県周南市など、武雄市を参考にする自治体が出てきたと報道されています。私たちは、武雄市民や図書館利用者、全国の公立図書館員や図書館友の会会員の見学情報を集めた結果、武雄市の事例は、公立図書館の振興・発展ばかりでなく地方自治のあり方にとっても、大きな問題・課題があると深く憂慮しています。

私たちは、この意見・要望書で指摘した6つの問題点・課題について、直接の関係者ばかりでなく、全国の自治体の図書館行政に携わる方、議員、マスコミ関係者、そして何よりも公立図書館の主人である住民一人ひとりに広く伝わるよう、心から願っています。

ご承知のとおり、日本の公立図書館の「図書館数」・「資料費」は、G8各国平均から大きく立ち遅れております。また図書館の要となる「司書」の配置も、公立図書館・学校図書館ともに大変貧しい状態にあります。その中で近年、公立図書館に指定管理者制度を導入したり、窓口業務を民間会社に委託する自治体が増えています。しかし、それは公立図書館が担うべき図書館サービスの低下につながり、私たちが目指す理想の図書館づくりにはそぐわないものとして、これまでもその問題・課題を提起してきました。

この意見・要望書を、これからの図書館のあり方を考える参考にして頂ければ幸甚に存じます。

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2014年2月24日 図書館の民間会社による管理・運営に関する意見・要望(海老名市あて)

平成26年2月24日
海老名市長 内野 優 様
海老名市教育委員長 海野惠子 様

図書館の民間会社による管理・運営に関する意見・要望

図書館友の会全国連絡会
代表 福富洋一郎

私たちは、公共図書館の充実と発展を求めて活動している図書館友の会の全国組織です。
佐賀県武雄市図書館は、昨年4月にカルチュア・コンビニエンス・クラブ社(以下「CCC」という。蔦屋書店、CD/DVDレンタルショップのTSUTAYAの運営会社で、スターバックスのライセンス提供を受けている)を指定管理者とする図書館としてリニューアルオープンしました。
このことは全国的に注目を集め、民間ノウハウ活用のモデルの一つとして紹介され、武雄市を参考にする自治体があると報道されています。海老名市も武雄市を参考にして、市立図書館の改善策を考えているのではないかと思い、ご参考までに武雄市図書館の実績を評価し、問題点・課題を6点にまとめてお伝えしたいと思います。この意見・要望に対し、ご回答をお願いします。

私たちは一昨年5月、樋渡武雄市長が、東京の代官山蔦屋書店で記者発表して以降、この動きに関心を持ち、武雄市民や図書館利用者、全国の公立図書館員や図書館友の会会員の見学情報を集めてきました。そして、この武雄市の事例が、公立図書館の振興・発展ばかりでなく地方自治にとっても、大きな問題・課題があると考えるに至りました。そして平成25年7月7日に「武雄市図書館の民間会社による管理・運営に関する声明書」を発表しましたので、これもご参考にしていただければ幸甚です。

1.Tカード採用は営業支援でありビッグデータへとつながる恐れ
武雄市図書館の指定管理者であるCCCにとって、Tカードは重要な営業促進手段の一つです。図書館カードにこのTカードを併用することについては、情報セキュリティ関係者や日本図書館協会、日本文藝家協会等から数々の懸念が表明されました。そのため、図書館利用者が従来の図書館カードを選択することも認めるようにはなりました。しかし、現場では丁寧な説明がないままTカードへの勧誘が続いています。海老名市がどうしてもTカードを図書館に使用しなければならないか、慎重に検討することを要望いたします。

図書館利用に特定のポイントカード使用を認めることは、CCCと提携しTカードを導入している事業者への便宜供与となり、営業支援行為であり、公平公正であるべき行政として大きな問題です。また、「利用者の貸出履歴など、個人情報が洩れたり、商業利用されたりすることはない」と説明していますが、一民間会社であるCCCが図書館利用に係る情報を集積することになり、ビッグデータとして自己情報コントロール権が侵害されることを懸念しています。

2.市民によるオープンな議論の場の提供を
市民の幸せを考える市政を目指すのであれば、公立図書館の管理運営に関することは事前に詳細情報を提供し、広くパブリックコメント等で市民の声を聴くとともに市民との意見交換の場を提供してください。海老名市はこれまでも市民の意見を取り上げてきていますが、懸念する市民に対し、さらにオープンな議論の場の提供を要望します。

図書館や歴史資料館など社会教育施設へ指定管理者制度を導入する最大の問題点は、業務の継続性が担保されないことだと考えます。指定管理者制度の目的が、民間活力の導入による住民サービスの向上であれば、競争の論理により数年で指定管理者が変わる可能性は大です。CCCは利益が出なければ撤退します。当然、図書館の司書や専門的職員も変わります。公立図書館は、日々の業務に加えて、町の記憶遺産や文化資産を収集・整理・保存し、次世代に引き継ぐという使命も併せ持っています。それを担う司書の専門性や、地域住民との協同作業は数年で培われるものではありません。費用対効果を考慮しても司書の継続的な確保は図書館にとって最重要課題です。だからこそ、市民は図書館への税金の投入を認め、その責任を行政に果たすよう求めています。

武雄市教育委員会は、図書館サービスをCCCに丸投げしてしまい主体的に教育機関として図書館の管理・運営を継続して行っておりません。本を借りてポイントをためたり、コーヒーを飲みながら本が読めたり、図書館で本や雑誌が購入できることが、その使命に勝るとは思えません。

3.CCCの採用は、地域振興に結びつかない懸念
CCCという東京に本社ある民間会社に図書館運営を委託するということは、人材とノウハウの根幹部分が地元に根付かず、東京に流出するということを意味します。地域振興のため東京から企業を誘致してくるというモデルは、これまでにも地域経済の中央依存や衰退など破たんを見ているはずですが、今回はそれを繰り返すことになります。

イタリアで始まったスローフード運動は、アメリカのファストフードチェーン店を拒否して、地産地消、即ち地域自立をめざすものですが、これは教育文化行政にも当てはまるものだと思います。東京に目を向けるのではなく、郷土の歴史・文化を大切にして、地元書店と共存共栄することが、真の地域振興策ではないかと考えます。
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2014年2月24日 図書館の民間会社による管理・運営に関する意見・要望(多賀城市あて)

平成26年2月24日
多賀城市長 菊地健次郎 様
多賀城市教育委員長 浅野憲隆 様

図書館の民間会社による管理・運営に関する意見・要望

図書館友の会全国連絡会
代表 福富洋一郎

私たちは、公共図書館の充実と発展を求めて活動している図書館友の会の全国組織です。

佐賀県武雄市図書館は、昨年4月にカルチュア・コンビニエンス・クラブ社(以下「CCC」という。蔦屋書店、CD/DVDレンタルショップのTSUTAYAの運営会社で、スターバックスのライセンス提供を受けている)を指定管理者とする図書館としてリニューアルオープンしました。

このことは全国的に注目を集め、民間ノウハウ活用のモデルの一つとして紹介され、武雄市を参考にする自治体があると報道されています。多賀城市も武雄市を参考にして、市立図書館の改善策を考えているのではないかと思い、ご参考までに武雄市図書館の実績を評価し、問題点・課題を6点にまとめてお伝えしたいと思います。この意見・要望に対し、ご回答をお願いします。

私たちは一昨年5月、樋渡武雄市長が、東京の代官山蔦屋書店で記者発表して以降、この動きに関心を持ち、武雄市民や図書館利用者、全国の公立図書館員や図書館友の会会員の見学情報を集めてきました。そして、この武雄市の事例が、公立図書館の振興・発展ばかりでなく地方自治にとっても、大きな問題・課題があると考えるに至りました。そして平成25年7月7日に「武雄市図書館の民間会社による管理・運営に関する声明書」を発表しましたので、これもご参考にしていただければ幸甚です。

1.Tカード採用は営業支援でありビッグデータへとつながる恐れ
武雄市図書館の指定管理者であるCCCにとって、Tカードは重要な営業促進手段の一つです。図書館カードにこのTカードを併用することについては、情報セキュリティ関係者や日本図書館協会、日本文藝家協会等から数々の懸念が表明されました。そのため、図書館利用者が従来の図書館カードを選択することも認めるようにはなりました。しかし、現場では丁寧な説明がないままTカードへの勧誘が続いています。多賀城市がどうしてもTカードを図書館に使用しなければならないか、慎重に検討することを要望いたします。

図書館利用に特定のポイントカード使用を認めることは、CCCと提携しTカードを導入している事業者への便宜供与となり、営業支援行為であり、公平公正であるべき行政として大きな問題です。また、「利用者の貸出履歴など、個人情報が洩れたり、商業利用されたりすることはない」と説明していますが、一民間会社であるCCCが図書館利用に係る情報を集積することになり、ビッグデータとして自己情報コントロール権が侵害されることを懸念しています。

2.市民によるオープンな議論の場の提供を
市民の幸せを考える市政を目指すのであれば、公立図書館の管理運営に関することは事前に詳細情報を提供し、広くパブリックコメント等で市民の声を聴くとともに市民との意見交換の場を提供してください。多賀城市はこれまでも市民の意見を取り上げてきていますが、懸念する市民に対し、さらにオープンな議論の場の提供を要望します。

図書館や歴史資料館など社会教育施設へ指定管理者制度を導入する最大の問題点は、業務の継続性が担保されないことだと考えます。指定管理者制度の目的が、民間活力の導入による住民サービスの向上であれば、競争の論理により数年で指定管理者が変わる可能性は大です。CCCは利益が出なければ撤退します。当然、図書館の司書や専門的職員も変わります。公立図書館は、日々の業務に加えて、町の記憶遺産や文化資産を収集・整理・保存し、次世代に引き継ぐという使命も併せ持っています。それを担う司書の専門性や、地域住民との協同作業は数年で培われるものではありません。費用対効果を考慮しても司書の継続的な確保は図書館にとって最重要課題です。だからこそ、市民は図書館への税金の投入を認め、その責任を行政に果たすよう求めています。

武雄市教育委員会は、図書館サービスをCCCに丸投げしてしまい主体的に教育機関として図書館の管理・運営を継続して行っておりません。本を借りてポイントをためたり、コーヒーを飲みながら本が読めたり、図書館で本や雑誌が購入できることが、その使命に勝るとは思えません。

3.CCCの採用は、地域振興に結びつかない懸念
CCCという東京に本社ある民間会社に図書館運営を委託するということは、人材とノウハウの根幹部分が地元に根付かず、東京に流出するということを意味します。地域振興のため東京から企業を誘致してくるというモデルは、これまでにも地域経済の中央依存や衰退など破たんを見ているはずですが、今回はそれを繰り返すことになります。

イタリアで始まったスローフード運動は、アメリカのファストフードチェーン店を拒否して、地産地消、即ち地域自立をめざすものですが、これは教育文化行政にも当てはまるものだと思います。東京に目を向けるのではなく、郷土の歴史・文化を大切にして、地元書店と共存共栄することが、真の地域振興策ではないかと考えます。

4.武雄市における地方自治法や図書館法等の法令遵守違反
自治体の首長が、特定の民間会社を指定管理者に選定し、十分な情報公開をしない地方自治のあり方は問題です。スピード感を重視するという理由で、行政が遵守すべき手続きを市長が軽んじてきました。 武雄市長の独断でCCC1社を指定管理者として指名したことは、受注価格、公平性、透明性に問題があり、地方自治に求められる公共調達の適正化方針に反します。また市立図書館の改造に当たり、CCC社の営業部分も公共投資で実施したことは、問題があると考えます。特定の民間会社を優遇することは、公平公正を旨とする行政の立場を逸脱していると私たちは考えます。

多賀城市では武雄市とは状況が違っていますが、図書館政策を市民に示さないまま、武雄市と同様にCCCという特定の民間会社を特命したと市民に誤解を与えないようにご説明をお願いいたします。

5.市民が求める公立図書館像との乖離
改めて言うまでも無く、公立図書館が担うべき公共性は、すべての住民、特に社会的に弱い立場の住民の基本的人権や知る権利を守ることにあると考えます。公立図書館は、高齢者や子どもたち、障がい者、低所得層などの社会的弱者の利用を基本と考えるユニバーサルサービスの構築・提供を第一に考えるべきです。 武雄市図書館は、リニューアルして商業主義が目立ち、この「民主主義の砦」としての公立図書館の役割と公共性への配慮がまったく欠如してしまいました。

また、市民が求める図書館サービスは、利用者に対応したサービスや貸出サービスだけでなく、レファレンス等の情報サービス、さらには地域の課題に対応したサービスなど多様なものです。多賀城市におかれては、これらの図書館サービスを十分行える態勢づくりを目指していただくよう要望します。(【参照】「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成24年12月19日 文部科学省告示)

6.公共サービスの商業化の抑制、公共の場の安心・安全の確保
今回武雄市は、書店とCD/DVDレンタルショップ、コーヒー店を配置することにより入館者を増やしました。武雄市では、図書館の来館者を大幅に増やすことが地域の活性化につながり、成功だと評価しています。

しかし私たちは、公立図書館に求められる本来の公共サービスは逆に弱体化したと考えます。民間会社であるCCCは、書店やレンタル、コーヒー店の営業から、収益を上げることができます。事実武雄市図書館では、貸出も可能な雑誌資料の所蔵タイトル数を大幅に減らし、書店での販売を促進しています。商業色が前面に出てきたため、経済的に恵まれていない高齢者や子どもを持つ親たちが利用を躊躇する状況が生まれてきています。リニューアルオープン後、まだ、判断力があるとはいえない子どもたちが嬉々として自動貸出機でTカードを使っている姿や、図書館利用者の座席でも誤ってCCC社員が商品購入を要求したことなどは、境目のない「商業施設」との同居の弊害ではないでしょうか。

また天井まで続く書架に詰め込まれた本は、地震時、凶器と化して利用者を襲う危険性が懸念されています。一部はダミー本であるようですが、多賀城市もこの天井まで続くデザインを採用する等、武雄市図書館のデザインを取り入れようとしているのではないかと懸念しています。商業化を抑制するとともに、公共の場の安心・安全の確保を要望します。

以上

【参考】 「私たちの図書館宣言」
http://totomoren.net/aboutus.html#sengen
私たちは図書館のあるべき姿として、2009年に「私たちの図書館宣言」を発表しました。その前文で、「図書館は人類の叡智の宝庫です。読み、調べ、学び、交流し、必要な情報が得られる教育機関として、私たちの自立と地域社会の発展になくてはならない施設です。」 そして、第7項目では「教育委員会の責任で設置し、直接、管理運営される図書館」と宣言しています。

2014年2月24日 図書館の民間会社による管理・運営に関する意見・要望(多賀城市あて PDF)