平成26年10月30日
総務大臣 高市早苗 様
図書館友の会全国連絡会 代表 福富洋一郎
図書館問題研究会 委員長 中沢孝之
その他賛同91団体
地方自治を支える公立図書館の振興施策を求める要望書
私たちは、公立図書館の振興発展のために各地で活動を行なってきました。
今日の公立図書館の環境は、地方公共団体の財政悪化により、資料費や人員の削減ばかりか、指定管理者による民営化など、コスト削減を目的とした効率化が進行しています。図書館運営の責任放棄のみならず、官製ワーキングプアと呼ばれる非正規労働者を大量に生み出しました。私たちは、官自らが「格差社会」を拡大させ、社会の不安定化を増大させていることに疑問を感じざるをえません。
また、社会の安定化とともに、社会を維持発展させるために、新しい時代を切り開く活力のある社会を築くことが必要です。迂遠であっても、知力、文化力、技術力といった基礎的な力を身につけ、自ら考え判断する力を持つ人間が育つ環境を整備する以外には方策はありません。このことが民主主義社会を支えることにつながり、わが国の繁栄にもつながるものと考えます。
そのためには、公立図書館が地域の情報拠点としての役割を果たすために国が果たすべき役割は大きいと考えます。私たちは国が図書館の重要性を全国に発信すること、そして全国の図書館づくりを支える施策を実施することを願っています。
総務省が平成22年12月28日「指定管理者制度の運用について」の通知、この7月4日には臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用について」を発出されたことを評価しています。
平成22年度補正予算では、司書の確保や図書の充実、図書館の増築を対象に入れた「住民生活に光をそそぐ交付金」を措置し、平成24年度予算に「住民生活に光をそそぐ事業」を地方交付税として予算化されました。
以下、公立図書館の振興のため要望いたします。ご多用のところ恐縮ですが、11月末日までに図書館友の会全国連絡会代表に文書でご回答をお願いします。
要望事項
1.東日本大震災の被災地域の図書館に対する支援策の実施
大震災から3年半が経過しましたが、復興にはまだ遠く、貴重な地域資料、郷土資料も多く損傷したままにあります。日を追って回復は困難を増します。また、東北の「今」を伝えようと発信される多くの記録・情報も、今保存しなければ消えてしまいます。
私たちは、図書館が一刻も早く復興し、地域の生活情報の拠点として、地域の人々を支える中心となって活動することを願っています。関係機関や市民と連携をとり、復興政策のなかに図書館の設備や蔵書の復旧はもとより図書館で働く人々の雇用確保等の財源を配慮し、支援策を強力に実施するよう要望します。
2.補助金・交付金等措置の実施
平成 22 年度補正予算「住民生活に光をそそぐ交付金」以降、総務省が公立図書館振興予算を措置していることを、私たちは高く評価します。
公立図書館が効率的に機能するために、文部科学省と調整し、司書館長・司書職員の配置を要件とする、図書館建設及び資料費等への補助金・交付金等を措置してください。
3.指定管理者制度、業務委託等民営化に関する調査の実施
平成 22 年、私たちが要望した「図書館の民営化に関する調査」に対して、総務省は「各地方公共団体に対して、委託を行う事務事業について行政としての責任を果たすよう、選定基準の策定、情報公開による透明性の確保など、選定過程における留意事項等について必要な助言を行っているところである」と回答されました。しかし、総務省の助言は無視され、住民には十分な説明がないまま、コスト削減を目的とした民営化が各地で進んでいます。導入後は企業秘密を理由にして図書館運営の実態は明らかにしない、という状態です。
総務省が平成 24 年 11 月に公表した「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」(総務省自治行政局行政経営支援室)には、「県・市民会館、文化会館、博物館、自然の家、海・山の家等」と示される「文教施設」に図書館は含まれています。しかし、せっかく情報として収集しても、性格の大きく異なるものを「文教施設」に一括したのでは実態が把握できません。図書館のみの調査結果を公表してください。
4.県域を越えた資料搬送費の無料化の実現
図書館利用者が、他の図書館から図書資料を入手する場合、現状は多くの県立図書館が中心となって県域の資料搬送を受け持ち、県内の資料流通システムが作られています。しかし、県域を越えた場合は、借り受ける図書館が送料を負担しますが、予算が無いので利用を断わったり、利用者に経費を負担させたりすることがあるなどの問題が起きています。
誰でも必要な資料を無料で、貧富の差なく利用できるよう、県域を越えた資料流通に必要な搬送費用(郵送費等)を国の政策で無料化してください。また、このことについて、文部科学省、国立国会図書館とも連絡調整をおこなって進めてください
5.書籍・雑誌・新聞等出版物の消費税軽減
書籍・雑誌・新聞を閲読する機会を増やすことは、国民の文化生活や、民主主義社会を維持発展させる上で大事なことと考えます。書籍・雑誌・新聞等出版物の消費税について、廃止あるいは軽減措置をおこなってください。
以上
連絡先 図書館友の会全国連絡会事務局長船橋佳子
※個人情報保護の観点より事務局等の連絡先はホームページでは非公開とさせていただきます。お問い合せは図友連HPメールフォームよりお願いいたします。