【2015年3月30日】「福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書」回答へのお礼とお尋ね

平成27年3月30日

福岡市長   髙島宗一郎 様
福岡市教育長 酒井 龍彦 様

図書館友の会全国連絡会
代表 福富洋一郎

「福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書」回答へのお礼とお尋ね

前略、平成27年2月3日付けで高島市長と酒井教育長に送りました「福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書」(以下、「要望書」という)に対し、酒井教育長から平成27年2月20日付けでご回答をいただきましたことに、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。ご回答につきましては、当会として一定の考えをまとめ、「見解」として公表させていただきます。ご参考までに同封しましたのでご高覧いただければ幸甚です。

さて、ご回答につきまして、確認したいこと、お尋ねしなければならないことなどが3点ございます。お忙しいところ恐縮ですが、誤解を避けるために、1.及び2.については、再度ご回答をお願いします。3.については、当会の考えを述べるにとどめ、特にご回答を求めることはいたしません。

1.「要望書」には、市長が責任を持つ個所についてご回答及びご見解を求めましたが、市長からご回答がありませんでした。ご回答をお願いいたします。「要望書」へのご回答及びご見解は、「行政改革プラン」の責任者である市長と、図書館行政の責任者である教育長に求めたものです。2月20日福岡市から「教育長が1本にまとめて回答する」という電話連絡が入りましたが、送られて来た「回答」は教育長からのものであり、市長が責任を持つ個所への「回答」は入っているようには見えません。このことについて説明していただくとともに、改めて市長からご回答いただくようお願いします。

2.教育長の議会答弁と今回の「回答」との食い違いについて確認したいので、次の2点にご回答をお願いします。私どもは「要望書」の要望項目2.の最後の段落で、2014年9月の市議会で、「図書館新ビジョン」に市民意見(指定管理者制度導入に98%の慎重検討・直営継続)を反映させない理由を、「『行財政改革プラン』に基づくものであるから」と教育長が答弁していることから、「図書館新ビジョン」検討以前に指定管理者導入は既定のものであった、と述べました。
ところが、今回の「回答」(項目2.)では、「・・・それら(パブリック・コメント)も参考にして新ビジョンを策定し、(指定管理者)制度導入の検討を行ったものです。」と述べています。市議会での教育長答弁が正しいとすれば、この回答では、指定管理者制度の導入が「行財政改革プラン」で実質的に決まっていたにも関わらず、導入の検討を行っていた事になり、私たちには奇異に感じられます。
そこで、次の2点について、ご回答くださるようにお願いします。
(1)平成26年第4回定例会議事録にある、池田良子市会議員の質問にかかわる酒井教育長の答弁の記載に間違いはないと考えてよいのでしょうか。
(2)今回の「回答」で、「図書館新ビジョン」と指定管理者制度導入にかかわる記述に間違いはないと考えてよいのでしょうか。

3.「要望書」の読み取りの誤りがあると思われるので、お知らせします。
「回答」2項目の最終段落に「『開館時間や開館日の増大は,現行体制でも経費増無しにできること』とのご指摘ですが,職員の人件費や館内の光熱水費,総合図書館における警備や総合案内の窓口業務等の委託に係る経費については,増額なしで実施することは困難な状況であると考えています。」と書かれているのは、私どもは「要望書」の要望項目2.の趣旨の読み取りの誤りからの「回答」だと考えます。
「要望書」は、「回答」の引用した個所を含め前後一連の文章で、指定管理と現行体制(即ち直営体制)との比較をし、指定管理者制度の導入による課題・疑問点を述べたものです。「回答」のようにこの個所だけを取り上げ、誤って解釈すれば、指摘個所に続く文章はさらに奇妙な主張をしていることになり、また、全体も何を言っているのか、はっきりしないものになります。福岡市は指定管理者制度の導入に当たって、開館時間や開館日の増大を最大の目標にしているのでしょうか。「要望書」の文章は平易に書いてありますので、趣旨を正しく読み取っていただき、何故導入しなければならないのか、私たちが指摘する課題・デメリットにどう対応するのか、説明責任を果たしていただきたいと考えます。
以上

送付先   図書館友の会全国連絡会 代表 福富洋一郎
※(住所・TEL省略)
連絡先  図書館友の会全国連絡会 事務局長 船橋佳子
※(住所・TEL省略)

※個人情報保護の観点より事務局の連絡先はホームページでは非公開とさせていただきます。お問い合せは図友連HPメールフォームよりお願いいたします。

>>「福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書」回答へのお礼とお尋ね(PDF)

【2015年3月30日】福岡市回答に対する見解

平成27年3月30日
図書館友の会全国連絡会

福岡市回答に対する見解
「福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書」福岡市教育長回答についての見解)

平成27年2月3日付けで福岡市の高島市長と酒井教育長に送った「福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書」(以下、「要望書」という)に対し、2月20日福岡市から「教育長が1本にまとめて回答する」という電話連絡が入り、教育長からの回答(2月20日付け、2月23日着)があった。しかし、回答内容は教育委員会の管轄範囲だけであって、市長が責任を持つ範囲のものは含んでなかった。また、他にも確認が必要なこともあったので、「お礼とお尋ね」を3月30日付けで市長・教育長に連名で送り、再度回答をもらうことにした。
正式な「見解」はそれを待って述べることになるが、時間も過ぎていく中、今時点で主要と考える問題点3点について「見解」を発表することにしたい。

1.「要望書」の3つの柱の内、1つだけにしか回答がないこと

「要望書」は、「1.指定管理者制度は図書館になじまず弊害をもたらすこと 2.貴市においては指定管理者制度導入の検討が十分に行われているとは見えず、市民の意見も取り入れられていないように見えること 3.貴市の図書館サービスは政令市のなかでも最低水準にあり、さらに低下させるものであること」の3つの柱で要望した。
このうち教育長からの回答には、1.及び3.については言及がなかった。2.についてのみ回答を行ってきた。従って市長からの回答を待って評価することとする。

2.指定管理者制度導入の意思決定がどのようになされたのか、あいまいなこと

回答では、冒頭部分で「公の施設の管理については指定管理者制度の活用を基本とする」との市の基本的方針に基づき、「行政が担う業務」と「民間が活用できる業務」とに仕分けしたと述べている。この基本的方針に基づき、図書館の指定管理者制度導入が実質的に決定されたものと読みとれるが、基本的方針を誰が何時決めたか、そもそも基本的方針とは何を指しているのか書いていない。
また、回答では「図書館新ビジョン」に代わって、指定管理者制度導入の検討を行ったとある。ところが、それは、導入の是非について検討するものではなく、どの業務を指定管理にするかを仕分する検討作業のことを「指定管理者制度導入の検討」と言っているので、紛らわしい。
さらに、この仕分けの検討は、「図書館の設置及び望ましい基準」を踏まえ検討したもので、法令の趣旨から逸脱したものではない、と主張している。同基準の指定管理者についての規定は、図書館の管理を指定管理者に行わせる場合もきちんとこの基準が確実に実施されるように努める、としたものに過ぎない。指定管理者制度の導入の是非を検討するときに、言及すべき法律の第一は「地方自治法」である。また、総務省は指定管理者制度の適正な運用を求める通知を出しているが、これへの言及もない。
図書館への指定管理者制度導入がどのような手続きや検討を経て決定されたのか、この最も重要な点の「回答」を教育長が避けている以上、市長からの回答を待たざるをえない状況にある。「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき、条例の定めるところにより、指定管理者に管理を行わせることができる」(地方自治法第244条の4第3項)」という法の規定が骨抜きにされたと見るしかない。

3.指定管理者制度導入にあたり、指定管理者制度以外の方法との比較検討がきちんとなされたのか、疑問であること

指定管理者を導入した図書館が共通してメリットとして強調するのは、経費削減と開館日・時間の拡大である。これが可能なのは、直営の正規職員を低賃金の指定管理者の(非正規)社員に置き換え、その人件費の落差をサービス拡大と経費削減の財源に充てるからである。ところが、福岡市はこれまで図書館軽視の政策を続けた結果、図書館職員の中心は非常勤職員と図書館業務を受託した民間会社のパート社員という低賃金労働者に、既になっている。それらを、指定管理会社のパート社員に替えても大きな差額は出ない。「人件費の増額なしで実施するのは困難」ということは、サービス拡大分は経費増にならざるをえないし、経費削減はないと主張しているのではないか。
指定管理料は、人件費、建物の維持管理経費などのほかに、受託会社本社の事務経費、営業経費(指定管理者制度導入への働きかけや指定管理者受託のための経費)、株主への配当金に充てるための利潤、さらに、それらの合計に8%の消費税分を加えた総計になる。
福岡市の場合、現行体制(即ち直営体制)の中で必要人員の増員を図った方が経費は安くなるはずであると考える。勤務条件や要人員管理の変更は、教育長の管轄範囲を超えると思われるが、市長の立場で現行職員の勤務条件を見直し、民間会社と比較すべきである。図書館は無料なので指定管理料はすべて税金を使うのだから、経費削減のメリットが本当に出るか、指定管理以外の方法との比較検討もきちんとなすべきである。比較資料があれば送付していただきたいと依頼したが、このことについて「回答」は黙している。
図書館に指定管理者制度を導入するデメリット・問題点については、日本図書館協会の見解「公立図書館の指定管理者制度について」(平成22年3月1日)に述べられているが、福岡市の場合は経費削減というメリットも明確に説明されておらず、指定管理者制度を導入すること自体が目的化しているのではないかと懸念している。
以上

【連絡先】 図書館友の会全国連絡会
代表 福富洋一郎
事務局長  船橋佳子
※(TEL省略)
※個人情報保護の観点より事務局の連絡先はホームページでは非公開とさせていただきます。お問い合せは図友連HPメールフォームよりお願いいたします。

【参考】 「私たちの図書館宣言」
http://totomoren.net/aboutus.html#sengen

私たちは図書館のあるべき姿として、2009年に「私たちの図書館宣言」を発表しました。その前文で、「図書館は人類の叡智の宝庫です。読み、調べ、学び、交流し、必要な情報が得られる教育機関として、私たちの自立と地域社会の発展になくてはならない施設です。」 そして、第7項目では「教育委員会の責任で設置し、直接、管理運営される図書館」と宣言しています。

>>福岡市回答に対する見解(PDF)