2014年文部科学省 事務方との面談報告

 

<2014年文部科学省 事務方との面談報告>

日時: 2014年10月30日 午後12時25分から13時05分
場所; 文部科学省会議室
(以下敬称略)
面談者;*文部科学省 生涯学習政策局 社会教育課
課長補佐 高橋陵子
庶務係長 細野 蔵
*文化庁 文化部芸術文化課
課長補佐 益居 綾

図友連;AK・I・G・TK・TU・W・FN(図友連代表)・FK(事務局)
※ネット掲載にあたり、図友連側の発言者氏名を個人情報保護の観点によりイニシャルのみとさせていただきます。ご了承ください。
要望書の項目順に 高橋課長補佐及び益居課長補佐より 回答があった。
最後に参加者より 意見を述べた

1.東日本大震災の被災地域の図書館に対する支援策の実施
高橋:被災した公共図書館や学校図書館に関しては、地方公共団体から申請のあったものについては、すでに補助金をほとんど交付して終わって、あと1~2か所残すのみと聞いている。岩手県など被災地では、ソフト事業というか、地域コミュニティ再生事業を行っていて、そちらの事業を活用して、例えば学校など移動図書館事業の支援をさせてもらっている。市町村立図書館を巡回して資料の相互貸借や読書の育成事業など取り組んでいる所があって、そういうところに支援をさせてもらっているという事例がある。

FK:震災の後、図書館の意義が非常にはっきりとしてきた。ボランティアも含め色々な支援をしてきたところ、本を読むということがどれほど気持ちの上でいいことか、大事な記録が無くなるということが非常に大変だということを含め、まだ復興が十分されていない。文科省も色々な施策を取っていただき、私たち市民の中でも色々情報があるが、今のところ動いていただいているようだ。今後も、福島の原発関係で避難のところなどの問題も新たに出てきているようなので、引き続き文科省の方で注目し、文科省ができる部分は施策の部分だろうが、状況把握をしていただいて、足りないところに対しては提言をするとか、指導するなどの点でよろしくお願いしたい。

FN;今日この場に参加できなかった福島の会員から、復興計画の中に図書館の復興ということをはっきり明記していただきたい、地元としては一生懸命やっていただいていると思うが、図書館の復興はなかなか進んでいないという現実があるので、その点をよろしくお願いしたい、との要望があった。

2.市民参加で中長期図書館振興政策の策定
高橋:25年6月に第2次教育振興基本計画が閣議決定していて、教育行政の基本的な方向性のひとつとして「絆づくりと活力あるコミュニティの形成」というものを掲げて、この中で図書館を含む社会教育施設を 地域の振興再生に貢献するコミュニティの中核として位置付けている。図書館活動の充実をまさに検討していく場としては、各図書館に置かれている図書館協議会が重要な役割を果たすと認識をしている。24年に出された「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」でも自治体は図書館協議会を設置して、地域の実情を踏まえ、利用者及び住民の要望を十分に反映した図書館の運営がなされるよう努めるものとともに その委員に地域の実情に応じて多様な人材の参画を得るよう努める旨規定しているので、ぜひこの趣旨を十分に図書館協議会の方で反映されるよう、文科省としては情報提供に努めていきたい。

FK:私は図書館びいきかもしれないが、図書館は図書館法により社会教育の柱なので、大項目で出てくれるとうれしい。先ほどの説明のように、コミュニティの形成策の一つとして図書館が扱われるのは非常にさみしい。具体的には地方自治体の図書館政策ということになるが、自治体が何かやる時に、5の(1)の要望にもからむが、私の住む横浜市のように図書館協議会がないところもある。図書館協議会で中長期政策をというのではなく、各市町村がきっちりと中長期計画を作り、その時に図書館協議会が市民の意見も聞くというようにしてもらいたい。一番初めに市民参加でという意味では確かに図書館協議会だが、まずは市町村で中長期計画を作るということ自体を明確にしてほしい。文科省の方で望ましい基準もできたことだから あとで要望が出てくるが、望ましい基準を普及し評価して、この自治体はまだ動いていない、というような調査をしてほしい。

高橋:私も個人的には図書館協議会が形骸化しているのではないかという話は時々聞いたりしている。やはり住民の方が、自分たちの問題として声をあげてもらって、活性化の方向に持って行ってもらうのも非常に大事なことかと思っている。5の(1)の話が出たが、住民参加を必須とする必置機関としてくださいというような要望も記載されているが、ここにある委員の任命というのは制度上は可能になっている。担当部局と十分に意見を尽くしていただいて、皆さんが図書館協議会活性化という方向にうまく話を持って行っていただくのが、一番いいのかと思う。先ほど大臣政務官からも話がありましたように、やはり地方分権で、図書館に対して国が指導するという権限がないので、国から言ってもそこは自治体の判断なので、図書館にいちばん近い住民から声をあげてもらうのが非常に大事なのかなと思っている。
FK:明日からの第100回全国図書館大会の二日目に 私たち図友連が主催する第24分科会のテーマが「市民と図書館協議会」だ。図友連も今回の大会は共催団体となっている。図書館協議会を必ず置く事というように法律を改正したいと思っている。当日は今この場に参加しているGさんの北海道登別の事例、静岡の草谷さんの事例などがあるので、ぜひのぞいてみていただきたい。

高橋:文部科学大臣の祝辞があるので明日は必ず伺います。こちらからの宣伝ですが、文部科学省が展示のブースを持ちますので、ぜひお立ち寄りください。

FK:午後からの分科会は「図書館とマスメディア」で、メディアが図書館のことをどう伝えて支えるのか、メディアの知る権利など 今回は2つのテーマで分科会を行うので、よろしくお願いしたい。時間がないので全部を説明いただき、後からまとめて補足意見を申し上げたい。

3.補助金・交付金等措置の実施
高橋:施設整備に関わる補助金については廃止されて、地方交付税の中の一般財源という取扱いになっている。地方公共団体の自主性、自立性を高めるという観点から、地方分権推進委員会が当時政府に置かれていたが、そこが勧告してそのような取り扱いになった。大臣政務官室でも話がされていたが、23年から25年度の間、特別交付税措置としてひかり交付金が講じられていたし、23年度については、普通交付税措置の充実が図られていた。司書館長の配置を要件とするということが書かれているが、図書館長については、望ましい基準においてその職責にかんがみ、図書館サービスその他の図書館の運営及び行政に必要な知識・経験とともに、司書となる資格を有するものを任命することが望ましいとされているので、こちらも望ましい基準の趣旨が各図書館の方で浸透するよう、文部科学省としては情報提供に努めていきたいと考えている。

4.図書館管理運営を指定管理者制度、業務委託等民営化の対象から除外
高橋:武雄の図書館の話が先ほど出ていたが、皆さん勉強されているのでお分かりだと思うが、指定管理者制度や民間委託の導入に関しては各自治体の判断、設置者ということなので地方公共団体になるが、そちらの判断になっている。文科省としては利用者に対するサービスの充実に配慮しつつ、その導入の是非を判断されるよう期待をしている所である。指定管理者制度で行うことのメリットについては、よく言われることは、開館時間が延長されるということや、利用者のニーズに即した運営が推進されたというようなところをメリットとして聞くこともあるが、指定される期間が決まっていておおむね5年ということが多いと思うが、やはり長期的な視点に立った運営が難しいということや、期間が区切られているので、職員の研修機会や後継者の育成の機会の確保が難しいという指摘も頂戴している。文科省ではご存知かと思うが、指定管理者制度の導入について調査、研究を行っていて、安定した運営が可能な指定期間を検討してくださいとか、職員に対しても安定した処遇を確保するように努めてくださいとか、若手の人材育成についても長期的な観点に立って考えてもらいたいなどをその報告書の中で指摘させていただいている。こうした調査研究の内容については、引き続き普及に努めていきたいと考えている。

5.図書館法の改正
1)住民代表の参加を必須とする図書館協議会の必置(図書館法第14~16条の改正)
高橋:1)については先ほども申しあげたように、地域の実情に応じて各教育委員会の判断による公募の委員の任命も可能となっている。そちらも望ましい基準の普及と合わせて、周知に努めていきたいと考えている。

2)司書職員の必置及び館長の要件にかかわる規定(図書館法第13条の改正)
望ましい基準によれば専門的なサービスを実施するために必要な数の司書及び司書補を確保するよう、その積極的採用及び処遇改善に努めるというふうに書かれている。館長についても先ほど申しました通り、その職責にかんがみ、図書館サービスその他の図書館の運営及び行政に必要な知識・経験とともに、司書となる資格を有するものを任命することが望ましいとされているので、図書館法や望ましい基準の趣旨が伝わるよう 普及や情報提供を行っていきたいと考えている。

3)「個人情報保護」条文の新設
図書館が保有する個人情報については、個人情報保護法があって、図書館の本もこの法律の対象となっているので、個人情報保護法に基づいて 図書館の保有する個人情報は保護すべきものだと文科省は考えている。個人情報保護法においては 利用目的の特定や利用目的による制限、安全管理措置、第三者提供の制限など個人情報の取扱事業者の義務を定めている。この義務に違反した場合は大臣が必要な処置をとる旨勧告することができるとされている。図書館法は法律なので国会で改正しなければならないということで、すぐにはなかなか難しい状況ではあるが、各図書館で個人情報の保護に努めていただきたい。

6.図書館で働く非正規職員の労働環境の改善
高橋:昨年度も同じ内容をいただいていたが、それとあまり変わらない答えとなってしまうが、図書館の非正規職員の採用については、まさに採用する自治体で判断することとなっているので、今文科省においてこれ以上申し上げるのは難しいという状況である。

7.地域資料や郷土資料の電子化のための予算計上
高橋:残念ながら、こういった予算がない。文科省は地方分権の流れの中でハード面、いわゆる建物等の補助金とか、ソフト面、事業を行う際の補助金は、自治体の方でということで、自治体の自主性に任せるということで、交付税措置の中に入ってしまっているという状況である。過去の経緯も考えると予算上の新しい補助金の予算を立てるというのは、非常に厳しい状況であると申し上げざるを得ないが、デジタルコンテンツに対しての地方交付税措置が行われているという話は聞いている。地方交付税措置の話なので、内容については総務省や地方自治体の担当部署の担当者に聞いてもわかるのではないかと思うので、一度問い合わせていただくのがよろしいかと思っている。

8.「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の普及および到達度の調査
高橋:文科省としては、今社会教育調査を行っている。毎年ではなく、3年に1回ということになっているが、この中で図書館に関する調査も行っている。この調査で望ましい基準に対する実態というのはある程度把握しているのではないかと認識しているが、さらに新たな調査項目が必要であるかということについては、引き続き検討していきたいと思っている。皆さんの方でこういった項目が社会教育調査には無いのではないかというように具体的に教えていただければ、こちらも検討する際の参考にさせていただきたいと思っているのでどうぞよろしくお願いしたい。

9.県域を越えた資料搬送費の無料化の実現
高橋:図書館間の相互貸借に関わる郵送費と思うが、対価を徴収するかに関しては、図書館の設置者である地方公共団体の判断にゆだねられる部分ということになるので、もちろん図書館の規定は承知しているが、資料搬送費の部分について、地方公共団体の判断であるというところである。

10.国立国会図書館の書誌データを全国に普及させる施策
高橋:平成24年1月から国立国会図書館の書誌データが無償で提供されているということは承知しているが、国立国会図書館もHPで周知したりして普及に努められている。私たちも国立国会図書館が地方の図書館長を集めて年に1回会議をしているが、そこに一緒に参加させていただいて、そういった場で国立国会図書館の方から、書誌データの無償提供については、案内をしているということは把握している。それをすぐに全国の図書館にというのは、すでに流通しているものもあるので、図書館の方で切り替える、切り替えないというのは 予算もかかっているので、文科省から音頭を取ってやるというのも非常に厳しいものがある。選択は各図書館で判断していただかなければならない部分もあるので、それで答えを返させていただきたい。

11.書籍・雑誌・新聞等出版物の消費税軽減
益居:消費税の軽減税率の適用については、今まさに与党の税制協議会で議論が行われている。これまでの経緯とすると自民党・公明党の与党税制協議会で、今年の7月上旬から8月末にかけて幅広い団体からヒヤリングが行われた。第4回7月29日に日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本新聞協会、日本専門新聞協会からもヒヤリングが行われた。その時には対象品目の線引きについて、新聞、書籍、雑誌も軽減税率の対象としてほしいという声が上がっていたということがヒアリング概要にまとめられている。今月の頭から2015年度の軽減税率についての議論が本格化しているという風に報道されているが、文科省としても出版文化の発展が図られることが重要だと考えているので、その観点からも議論の動向を見守っていきたいと考えている。

高橋:何かご質問、ご意見があれば伺います。

TU:館長の司書資格については、確かに、言われたように司書となる資格を有するものを任命することが望ましいとされているが、現実的には、行政職の館長が移動で回ってきたり、嘱託館長であったりとか、行政がきちんと把握して引き継いでいくことがなくなってきた。館長の司書資格については、きっちりと国に明記してもらうのが必要ではないかと実感している。

高橋:昔は館長の司書資格というのが、必須だったが、規制緩和の流れもあったりして、
地方公共団体の要望もあって、法律の改正等もされていると思うので、今すぐには厳しいと思う。皆さんが引き続き要望を行っていくのが必要ではないかと思っている

TK:市民の側では館長が司書資格を持っているということを期待しないという状況になってきている。昔は資格があったのに、今は資格がなくて当たり前というのが一般的な図書館の状況になってきている。

高橋:新任図書館長研修というのをやっていて、そこで文科省の図書館行政の現状というのを話す時間があったが、その時に出席者を見ていると図書館の職員であったという方よりは、いわゆる市長部局にいた方が図書館長になられている方が、ずいぶん多いなという印象を受けた。

I:今までのお話では地方への分権という、国のコントロールが利かなくなってきたという感じがする。文科省や国がこの方針が必要だということになると、この方針を地方自治体がやっていくための何らかの方策を取らなければならないわけで、今は、文書を出したりしているが、全くと言ったら失礼だが、ほとんど効果なしに自治体がやりたいことを進めている。地方公共団体が図書館については、財政が厳しくなってきたら、もう図書館はいいとなって、安い指定管理者なり、委託業者なりに全部任してしまって、楽になってそこのところを考えなくてもよくなるということから、非常に荒廃したものを感じてしまう。そこにいる人を守るにはどうやったらいいのか、地方分権なので国が何も言えないというのがあっていいのかと思う。全体の流れがそうなっているからそれぞれの方が努力してもなかなかうまくいかないかもしれないが、ぜひ今まで言った状況は知っておいていただきたい。

高橋:指定管理については、以前総務省から通知か事務連絡が出て、単に経済的効率のみで決めるものではないという趣旨だったと思うが、まさに文科省もまさにそう思っていて、指定管理者制度について各方面から意見をいただくことがあるが、そこで強調させていただくのは、利用者サービスの質の向上が図られるという視点を忘れないでいただきたいということを必ず説明させていただく。おっしゃるとおりで、なかなか国の方から強く言ってどうこうという時勢ではないが、各都道府県担当者が集まる会議などの場を通じて、伝えるようにしている。

FK:指定管理が進んでいる時に、渡海元文科大臣が「指定管理はそぐわない」と答弁で言ったのにかかわらず、逆にダメだといわなかったから、文科大臣もOKだという方に文科大臣の言葉が使われたことがある。片山元総務大臣の場合は「指定管理はだめだ」とはっきり言っているから使われない。望ましい基準も、それさえ守ったらいい、どんどん進めてもいいという説明をして、民間で言うマーケットの拡大をやっている。新しいマーケットが出来たということで、CCCのように図書館をやったことのないところも参入して大評判になり、これはいいという流れになっている所を、ぜひ注意して欲しい。総務省は言ってくれたけれども、文科省も何らかの形で、真意がきちんと末端に伝わるように言っていただきたいというのが私たちの願いだ。文科省の気持ちはわかるが歯がゆさがあるという、感情論だがご理解いただければと思う。
図書館は地方に任せて国は知らないよというのではなくて、北は北海道から全国みな頑張っているが、指定管理者制度が導入されるとそれは自治体が決めたことだ、外から何を言うのか、自分たちが選んだ首長が決めたことではないかと言われてしまう。皆で手を組んで毎年毎年このように要望書を提出して、毎年毎年文科省からそれは難しい、という答えを伺って今日に至っている。今年もまた更にお願いしたいということで、望ましい基準もできたが法律改正について要望している。新しい所では5月の総会時に勉強会で勉強した個人情報の保護を法律に入れ込んだ。要望項目全部がすぐに出来ることではないと思うが、一歩一歩出来るところからやっていただきたい。その為には文科省とも一緒になって、議員にまず動いてもらい、あとは国民を動かし、私たちも主権者として頑張り、マスコミにも頑張ってほしい。本日はこのような時間を取っていただいて感謝したい。

FN:最後に確認させていただきたいが、文部科学省からは要望書に対して文書回答は出ず、本日の面談が回答であるという位置づけでよいか。

高橋:文書回答は出さないので、今回の面談でお答えした。

FN:赤池大臣政務官面談、この面談内容を会員へ報告しなければならないので、私の方で報告書を作成後、高橋課長補佐に内容の確認をしていただきたいと思っているので、どうぞよろしくお願いしたい。

(文責 FN)

■公立図書館の振興を求める要望書(文部科学省宛)

■2014年文部科学省 事務方との面談報告(PDF)

■文科省赤池大臣政務官面談報告書
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