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【2019/4/12】内閣府地方分権改革推進室との面談報告

日時:4月12日(金)10:00~11:10

場所:中央合同庁舎4号館8階、内閣府地方分権改革推進室の会議室

面談者

内閣府:内閣府地方分権改革推進室 参事官補佐 成相寿一氏     内閣府地方分権改革推進室 林田直樹氏、他に担当者1人が同席

図友連: 5名

図友連:要望書の回答ありがとうございました。図友連の紹介をします(略)。(「私たちの図書館宣言」パンフと『図書館のめざすもの(新版)』(竹内氏編訳、日本図書館協会2014年10月発行)を贈呈。

現在首長部局に移管されている図書館は全国に何カ所もあるが、内閣府としては全国の公共図書館のうちどれくらい移管されているかご存知ですか?

内閣府:存じ上げない。

図友連:補助執行(地方自治法180条の7)で首長部局に移管されている図書館があるのに、なぜ法律改正をする必要があるのか?また、補助執行で首長部局に移管された図書館ではいろいろと問題がでてきている。地方分権改革推進室ではどのような調査をして、どのような理由で今回の法律改正の上程となったのか。

内閣府:(地方分権改革の取り組みを紹介)自治体が活動する上で法律・政令等の国の制度が縛りとなって自由な発想で住民サービス向上のための活動がしづらい場合に、制度を変えて欲しいという提案を受け付けて、担当省庁と議論しながらどういった形であれば解決できるか議論し、必要に応じて制度改正をしている。これを「提案募集方式」といい、地方分権改革を進めている。

地方自治体から、社会教育施設(図書館、博物館、公民館等)を首長部局に移管したい場合にのみ選択的に移管できるような制度にして欲しいという提案を受けている。

その背景は、社会教育施設が社会教育の実践の場であることは前提としつつ、人口減少社会、少子高齢化社会の中で、さまざまなニーズが生じていて、例えば、まちづくりの核となり魅力を発信するような施設としての位置づけや、図書館では地域の課題の解決の場、総合拠点としてのニーズが高まっている。

図書館を補助執行で首長部局が部分的に事務を行う例もあるが最終的には所管する教育委員会が意思決定することになるためスピーディ・機動的に意思決定ができないといったデメリットがあると聞いており、より機動的・一体的に施策が展開できるような形にならないかということで提案があった。

提案が出され、地方分権改革有識者会議に置かれた提案募集検討専門部会での議論の後、文科省の中教審で改めて審議され、社会教育の適切な実施が確保されるための担保措置を設けた上であれば選択的な移管(選択肢を広げる)を可とすべき、との答申が出され、これを踏まえ文科省において検討し、一括法案として国会に提出した。

図友連:まちづくりのために図書館を使いたいと首長が考えたら図書館を首長が思うままに使えるになってしまうのではないかと危惧する。

図書館の中立性が失われてしまうのではないか?

図友連:「提案募集方式」で群馬県と名張市の提案を確認したが、提案の数は少ないように思う。困っている自治体の数は決して多くないのではないか?どのようなプロセスで今回の法律改正が進められることになったのか?補助執行で移管した舞鶴市の市民から、移管後、図書館予算が半減になったなど、課題・問題点が指摘されている。

内閣府:自治体からの提案で議論がスタートした。内閣府は地方自治体の声を所管省庁に伝え、そこで専門的な議論をいただくというプロセスをとる。制度所管省庁において専門的に議論して適当かどうか判断する。

中教審の議論では知事部局、民間団体、教育委員会など関係団体からのヒアリングが行われたと承知している。

提案が適当かどうかについて専門的な議論をいただいた上で今回の制度改正となった。

問題となっている舞鶴市の例では補助執行が教育委員会規則によるであれば議会を通さないのではないか。

今回の場合、移管するには条例を定めることが必要であり、その自治体で、移管する必要があるのかどうか議会での議論が必須となり民主的な議論がされることになる。

また、条例を議会に上程する際には議会は教育委員会の意見を聴かなくてはならない。このほかにも移管された場合の担保措置(教育委員会の関与)が中教審の議論を経て決められている。

図友連:地方議会では全ての議員が社会教育について詳しいわけではないので(十分な議論がされない場合もあった経験から)担保措置としての役割が果たせるのか不安である。

今の説明では担保措置によって慎重に議論すると、先ほど発言されたスピーディに意思決定ができないデメリットは払しょくされず、それなりに時間がかかるということになるはず。今回の提案はそのプロセスを省いて簡単にするためのものではないかと思う。

内閣府:教育委員会の関与なく首長ですべて決定することができると考えている自治体があるかどうかわからないが、今回制度改正を検討する中で絶対にそこは外せないところだと思っている。社会教育の実践の場であることは前提であるので、教育委員会の関与は必要となる。

首長がもしそれは困ると言ったとしても、政府としては仕組みをしっかりと守ってください、ということになる。

図友連:社会教育は大事だと大変に心強いお言葉だが、実は文科省から社会教育課が無くなっている。

地方自治体で図書館法や社会教育法の認識が低くなっている、そのような実態もぜひ認識しておいていただきたい。

図友連:文科省の審議は傍聴し報告も読んだ。文科省では「特別措置」という文言が総論に入っていたが、内閣府の総論には「特別措置」が抜けている。これは大切なポイントだ。

ところでこの法律は国会に提出されたのか?

内閣府:国会に提出したがまだ審議はされていない。「特別措置」に関しては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条において「職務権限の特例」として措置している。

図友連:国民の意見を十分に聴かないままで法律を上程したのは納得がいかない。日本図書館協会や図書館問題研究会など多くの市民団体からこの法律改正を懸念する意見表明がされている。なぜそういう意見をきかないのかとても残念だ。

内閣府:条文を作るに際しては文科省と一緒に作っている。

専門性をもった文科省にしっかりと専門的な議論してもらい、それをまとめていくところが内閣府。

いただいた指摘については文科省にも確認していただければと思う。

図友連:担保する要件、担保しなくてはならない項目にはどのようなものがあるのか検討されたのかが気になる。具体的に示さないと混乱する。

内閣府:現場が混乱しないよう、具体的にどういうところを自治体で決めなくてはならないかを明らかにする必要があると個人的には考えている。法律を施行するに当たっては所管する文科省が自治体に法律改正の内容について、留意しなくてはならないこと等説明されると思うが、どういう内容かについては改めて文科省に問い合わせて欲しい。

図友連:具体的な内容について説明責任を果たす必要がある。

内閣府:その通りだと思う。

図友連:図書館は資料を選定する行為をするところであるので、首長部局に移管されると弊害が起こるのではないかと心配している。

図友連:文科省での議論の中では図書館法第8条、13条1項、第15条の改正については取り上げられていなかった。要望書で改正は問題があると指摘をした。今回の一括法案になぜ入ったのか?

内閣府:文科省からでてきたもの。

社会教育全体の中でどう位置づけるかという議論の中からでてきたのではないかと思っている。

図友連:昭和32年に文部省が地教行法にある「教育機関」について示した文書がある。「専属の人的施設を備え、・・・みずからの意思をもって継続的に事業運営を行う機関」とあり、「資料の選定権は図書館長にある」と明確になっている。

資料の選定はイデオロギー的なものがあるので教育委員会という独立した行政委員会の中にあるからこそできる。長部局に移管されてしまったら図書館の精神が骨抜きにされてしまうのではないか?担保する内容はどういうことが考えられているのか気になっている。

図友連:これまで図書館法を含む「一括法」はたびたび出されていたが、図書館のことは議論されることはほとんどされてこなかったという実態にある。図書館の議論をさせないために一括法で上程されたのではないか?困ったことだ。

図友連:多くの意見が出されている中、突然3月8日に閣議決定されてしまった、というのが率直な感想である。図書館は社会教育(生涯学習)の中で大きな役割を果たしている。社会教育法と図書館法の改正が、一括法という形であっという間になされてしまうことは納得がいかない。

図友連:今後のことだが、これから文科省と話しあった結果、とり下げるということはできるのだろうか?

内閣府:いったん提出したものを取り下げるのはハードルが高い。

図友連:国会の場でいろいろな議員の方に質問していただくしかないのか?

内閣府:議論の結果として、国会で条文修正、附帯決議をつけるなどのことがありうる。

図友連:1999年の地方分権一括法の施行の後、2002年に鎌倉市では生涯学習部の首長部局移管が提案されが、それはゆゆしきことと文部省(当時)から鎌倉市に「指導」があり上程案が取り下げられたことがあった。

図書館法を変えるのであれば一括法で変えるのではなくきちんと広く国民に知らせて議論をしてからにするべきだと思う。

図友連:内閣府が現状を調査するとき、図書館についての情報提供は図友連に任せてください。内閣府でも図書館は優れた社会教育機関であるという認識を高めていただきたい。文科省と一緒に条文を作成したとのことなので、早速、文科省にも説明を求めたいと思います。

本日はどうもありがとうございました。

提供した資料

・長所管の図書館設置自治体の関係例規[41自治体の所管形態、関係例規名、所管部局名]

・長所管図書館のデータ

[図書館数、指定管理図書館数、職員数、資料数、貸出数、予算等の人口段階比較表]

・文部省「教育機関の解釈について」(昭和32年6月11日 初等中等教育局長回答)

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