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【2015年2月3日】福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書(福岡市教育長宛)

平成27年2月3日

福岡市教育長 酒井龍彦 様
図書館友の会全国連絡会
代表 福富洋一郎

福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書

平素よりの市政へのご尽力につきまして、改めて敬意を表します。
私たち図書館友の会全国連絡会は、全国各地で図書館の支援活動をしている団体・個人の全国組織です。これまで全国の図書館の振興・発展のため、国に対し財政措置を働きかける等の活動を行ってまいりました。
このたび、貴市が、平成28年度から総合図書館と東図書館(分館)に指定管理者制度を導入することを表明したことを、「西日本新聞経済電子版」(平成26年12月20日)で知りました。私たちは指定管理制度導入は、大きな問題があると考えます。よって、貴市が図書館への指定管理者制度導入を見直し、市民の声を取り入れて再検討することを要望いたします。その理由は下記のとおりです。
つきましては、「行政改革プラン」のトップマネジメントでもある市長及び図書館行政の責任者である教育長より、この要望書へのご回答、及び下記3点に対する見解をご教示くださいますようお願いします。
ご回答は2月20日までに下記の連絡先宛てにお送りください。当要望書及び貴市からのご回答は、当会のホームページ等を通して公開する予定です。ご多用のところ恐れ入りますが、よろしくお願いします。

1.指定管理者制度は図書館になじまず弊害をもたらすこと
1)民間活力が最も力を発揮するのは、効率的に収益をあげることにあります。しかし、図書館は収益を上げるための事業ではなく、指定管理者制度の導入により、安定的に図書館を経営することは難しくなります。制度自体が図書館経営に適さないものです。加えて、指定管理期間が3年ないしは5年と定められるため、図書館経営の根幹と言える専門的知識を持つ図書館員の育成が困難になるという致命的欠陥をもっています。
2)指定管理者制度を導入した図書館では以下のような事態が起きており、問題が発生しています。
①これまで公表されてきた多くの情報が企業秘密として公開されなくなるため、図書館運営が不透明となり、市民から見えなくなっています。
②指定管理者制度の導入が経費削減を主目的として行われるため、図書館員が最低賃金にほぼ等しい労働者(いわゆるワーキングプア)となり、しかもそれらの人々を大量に生み出し、社会を不安定にさせる要因を自治体自身が作ることになります。

2.貴市においては指定管理者制度導入の検討が十分に行われているとは見えず、市民の意見も取り入れられていないように見えること
指定管理者制度を導入するかどうかは、当該自治体が決めることであり、法令に基づき慎重におこなうべきものであります。地方自治法は「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき、条例の定めるところにより、指定管理者に管理を行わせることができる」(地方自治法第244条の4第3項)としています。平成20年 6月3日文部科学委員会で、渡海文科大臣(当時)は、長期的視野にたった運営や職員の研修機会の確保、後継者の育成等が難しくなる等の問題があることから、「指定管理者を導入するということであれば、そういう問題が払拭されて導入されるべきであろう」と答弁しています。また、平成22年12月28日総務省自治行政局長は、各自治体に「指定管理の運用について」の通達を出し、文部科学省は「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」を改正しました。(平成24年12月19日 告示)これらは共に尊重されるべきものと私たちは考えます。
貴市は、平成25年6月、「行財政改革プラン」を策定し、「ビルド・アンド・スクラップ」により抜本的に見直すとしました。同プランでは、図書館は「指定管理者制度導入の検討」とし、その内容として「分館の営業時間延長の要望に直営では対応困難」をあげ、新設の分館等からの導入検討を行うとしました。教育委員会は、平成26年6月「指定管理者制度などの民間活力の導入の検討」を含んだ「福岡市総合図書館新ビジョン」を決定し、12月19日に図書館への指定管理者制度導入を発表しました。
これらの経緯をみると、指定管理者制度導入の是非について十分な検討がなされているとは思えません。例えば貴市は、導入の目的を「建物点検や警備の一括委託で約1千万円の経費削減が見込める」「開館時間の延長や開館日の拡大も検討」(前記「西日本新聞経済電子版」)と述べています。最も重要な分館業務については、「開館日・開館時間拡大も検討」という検討の途中経過に過ぎません。図書館の設置目的を効果的に達成する、という視点が無く、法令の趣旨から逸脱したものではないでしょうか。
さらに、細かく言えば、指定管理者制度導入によって可能とする開館時間や開館日の増大は、現行体制でも経費増無しにできることです。また分館業務は、現行体制で行う方が、経費はかえって安くなるのではないでしょうか。ともに税金を使うのですから、指定管理以外の方法との比較検討もきちんとなされるべきと考えます。(すでに資料が作成されているのであれば、参考にしたいので資料をお送りください。)
貴市は昨年4月、「福岡市総合図書館新ビジョン」策定に当たって、市民意見を募集しました。教育長は、市議会答弁(平成26年9月10日)で「主な市民意見は」との質問に、「運営体制」についてが最も多く、「行政の直接運営を望む意見68件、十分な検討を求める意見28件、民間活力の導入を期待する意見2件」であることを明らかにしました。また、「直営の継続」「慎重検討」を求める98%の意見が「図書館新ビジョン」に反映されない根拠を問われ、「図書館新ビジョン」が「行財政改革プラン」に基づくものであるから、と答えています。言いかえれば、図書館の指定管理者導入を検討する前に、指定管理者制度の導入は既定のものであり、反対意見がどのように多くあってもそれは反映させない、ということです。パブリックコメントは、市民意見を真摯に検討するという姿勢があってこそ成立する制度であり、貴市の姿勢について疑問を持たざるをえません。

3.貴市の図書館サービスは政令市のなかでも最低水準にあり、さらに低下させるものであること
言うまでもなく、民主主義を維持するためには、必要とする情報を入手し、正確に判断できる力を持った多くの人々の存在が不可欠であります。そのために、図書館が、知識、思想、文化、情報の拠点としての役割を十全に果たすように、整備充実が図られなければならないと考えます。整備充実を図るのは自治体の責務です。以上のことは、私たちだけの思いではなく、「ユネスコ公共図書館宣言」(1994年)にも記述され、社会が共有する理念であると考えます。
しかし残念ながら、日本の公共図書館のサービス水準は欧米先進国に比較し、極めて低い状況です。この中でさらに貴市は、政令指定都市20市と比較して、①1館当たりの人口14位、②専任職員中の司書比率19位、③人口1人当たりの貸出数19位、④人口1人当たりの資料費17位(熊本市が不明のため19市中)となります。貴市の図書館は既にこのような状態にあることをご認識でしょうか。それにもかかわらず、貴市は「行財政改革プラン」により、取り組むべき施策事業の財源を確保するために、さらに図書館のスクラップ化を進めようとしています。
私たちは、行政が図書館の役割について理解を持つことを願っています。図書館法は「入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」(図書館法第17条)と規定しています。図書館を整備し、誰もが自由に図書館を利用できるようにすることが、自治体にとっていかに重要であるかを法律で具現化したものです。公共図書館の使命を伝える活動を展開する図書館はまだ少なく、図書館を「無料で本を貸してくれるところ」と見てしまう人たちも多く存在しています。しかし、市行政のトップにおいては、図書館の役割を正しく理解し、整備充実を図るご努力をお願いしたいと思います。
以上

連絡先 図書館友の会全国連絡会事務局長  船橋佳子
※(住所・TEL省略)
※個人情報保護の観点より事務局の連絡先はホームページでは非公開とさせていただきます。お問い合せは図友連HP http://totomoren.net/メールフォームよりお願いいたします。

■福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書(福岡市教育長宛:PDF)

■福岡市教育長よりの回答(PDF)

>>福岡市図書館への指定管理者制度の導入の見直し及び再検討を求める要望書(福岡市長宛)