公立図書館、学校図書館の振興を求める要望書

平成23年5月24日

文部科学大臣    高木義明 様
文部科学大臣政務官 笠 浩史 様
 図書館友の会全国連絡会  代表 福富洋一郎
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   学校図書館を考える全国連絡会 代表  広瀬恒子
 親子読書地域文庫全国連絡会 代表  広瀬恒子
 日本親子読書センター 代表  関谷康子
 図書館問題研究会 代表  中沢孝之
その他賛同71団体
 

 私たちは、公立図書館、学校図書館の振興、読書の推進を図るため、昨年11月16日、活字文化議員連盟・ 図書議員連盟・ 子どもの未来を考える議員連盟のご協力のもと、「第2回図書館問題懇談会」を衆議院第二議員会館において開催いたしました。文部科学省では、平成23年度予算案に「学校図書館・公立図書館への支援施策」を盛り込み、また総務省では、昨年末の補正予算で、司書の確保や図書の充実、図書館の増築を対象に入れた「住民生活に光をそそぐ交付金」の措置や、「指定管理者制度の運用について」(平成22年12月28日、総行経第38号)の通知など、図書館の振興に積極的に取り組んでいただいています。
 しかしながら、わが国の図書館は課題が山積しており、読書活動を取り巻く環境は依然として厳しいものがあります。本年は、図書館法第17条の無料原則規定の施行60周年、図書館記念日制定40周年でもあります。文部科学省におかれては、公立図書館、学校図書館の更なる振興策を策定し強力に実行することを期待いたします。具体的には、以下4点の実現を要望いたします。ご多用の中恐縮ですが、6月末日まで文書で図書館友の会全国連絡会代表にご回答をお願いします。

要望事項

1.東日本大震災の被災地域の図書館に対する支援策の実施

  このたびの大震災で公立図書館、学校図書館等も大きな被害を被ったことが伝えられています。そのような状況下、避難場所や図書館での職員や図書ボランティアの読書サービスが被災者の方々に安らぎと勇気を与えていることも報道されております。改めて申し上げるまでもなく、図書館は地域の生活情報拠点であり、地域資料、郷土資料の収集保存にとって重要な公共施設です。文部科学省としても関係機関や市民と連携をとり、復興政策のなかに図書館の設備や蔵書の復旧はもとより、図書館で働く人々の雇用確保等の財源を配慮し、支援策を強力に実施するよう要望します。

2.公立図書館の振興

(1) 市民参加で中長期図書館振興政策の策定

 立ち遅れているわが国の公立図書館を加速的に発展させるため、予算を伴った中長期的図書館振興政策を、市民参加で策定してください。

(2) 補助金・交付金等措置の実施

 知る権利、学ぶ権利を生涯にわたって保障する公立図書館は、誰でも無料で情報を得ることができるきわめて公共性の高い施設です。自治体間の格差をなくし有効に機能させるために、司書館長・司書職員の配置を要件とする、図書館建設及び資料費等への補助金・交付金等の措置をしてください。

(3) 図書館管理運営を指定管理者制度、業務委託等民営化の対象から除外

 平成20年6月、社会教育基本法の改正時、衆参両院の委員会が「指定管理者制度の導入による弊害、人材確保、有資格者の雇用確保など」の附帯決議を行い、当時の渡海文部科学大臣も国会答弁で「公立図書館に指定管理者制度はなじまない」と発言されました。指定管理者制度ばかりでなく、業務委託、市場化テスト、事業仕分け等による図書館運営の民営化も、同様の弊害をもたらします。総務省は、さらに一歩踏み込み、平成22年12月「指定管理者制度の運用について」を通知するとともに、片山総務大臣が記者会見において「公共図書館は指定管理になじまず、行政が直営で、スタッフを配置して運営すべきだ」と発言されました。
これらの警鐘を省みることなく、指定管理者制度導入など図書館の民営化を強引に進める自治体は後をたちません。住民には十分な説明がないまま、コスト削減を目的としたアウトソーシングが進むなど、各地で問題を起こしています。地方自治法は、指定管理者の導入を、「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めた場合」に限定しています。法が骨抜きにされれば国民は護られません。公立図書館の振興を管轄する文部科学大臣は、法に基づいた管理運営がなされるよう、図書館運営を指定管理者制度、業務委託等民営化の対象から除外し、実効ある施策を実施してください。
 また、指定管理者制度を導入した図書館に対して、指定管理期間終了後は直営に戻すよう、働きかけをして下さい。

(4) 図書館協議会の設置促進と住民代表枠の設置

 「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」に図書館協議会の設置推進と協議会委員に公募による住民代表枠の設置を入れてください。さらに図書館協議会は市民参加の重要な仕組みとなるので、図書館法第14条を改正し必置機関としてください。また、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」は、現行の図書館の水準に合わせるのではなく、「望ましい図書館」の基準を示したものにしてください。

(5) 図書館で働く官製ワーキングプアの労働環境の改善

 公立図書館において経費削減を前提とした司書の非正規・嘱託化が進んでいます。その雇用期間は、3年あるいは5年といった有期の雇用止めが散見されます。また、指定管理者制度など民営化された図書館で働く人々の多くが、時給800〜900円台という低い賃金で働いています。司書専門職は経験と知識の蓄積が必要な職務であり、短期間の有期雇用では、図書館サービスの質の低下を招きます。図書館本来の使命・役割を考えるとき、正規専門職雇用を当該自治体へ働きかけ、官製ワーキングプアの労働環境を改善してください。

(6) 地域資料や郷土資料の電子化のための予算計上 

 国立国会図書館で進めている資料の電子化計画は、将来の教育文化政策に大きな力を発揮する画期的な取り組みとして期待しています。公立図書館においても、独自の地域資料、郷土資料の電子化を推進し、国と連携することが強く望まれます。公立図書館における該当資料の電子化が、従来の資料費を削減することなく迅速に進められるよう、資料電子化のための補助金の設置等をしてください。

(7) 県域を越えた資料郵送費の無料化の実現

 図書館利用者が、他の図書館から図書資料を入手する場合、現状は県立図書館が中心となって県域の資料搬送を受け持ち、県内の資料流通システムが作られています。しかし、県域を越えた場合は、借り受ける図書館が送料を負担しますが、予算が無いので利用を断わったり、利用者に経費を負担させたりすることがあるなどの問題が起きています。
 貧富の差なく、誰でも必要な資料を無料で利用できるよう、県域を越えた資料流通に必要な郵送費等を国の政策で無料化してください。

3.学校図書館の活性化

(1)学校図書館整備のための効果的な財源処置

 学校図書館の整備充実のために予算措置されている地方交付税が、すべてその目的のために使用されるよう指導してください。「学校図書館図書標準」に達している学校図書館は、小学校45.2%、中学校39.4%(平成19年度末、文部科学省調査)に過ぎません。学校図書館の活性化のために、補助金等、効果的な財源処置をしてください。

(2)学校図書館への専門職員の配置

 子どもたちの学びに寄与できる学校図書館は、いつも開いていて、子どもたちや教諭が必要とするときにすぐ資料を手渡しできる「人」がいなければなりません。司書資格を持ち専門性を発揮できる専任で正規の学校司書を、すべての学校に配置するようにしてください。また学校司書が司書教諭と連携しながら学校図書館の活性化を進めることができるように司書教諭が担うべき役割を果たせる十分な時間を確保してください。

(3) 学校図書館運営を業務委託等民営化の対象から除外

 学校図書館において、民間会社への業務委託を導入したり、公立図書館を受託した指定管理者が社員を学校図書館へ派遣するなど、学校図書館を実質的に民間会社が運営することが起きています。学校教育に欠くことのできない学校図書館が、学校による直接管理ではなく、民間会社に委ねられることに大きな危惧を感じます。加えて学校図書館の運営ノウハウやスキルが学校に蓄積されないと、学校図書館の継続的な発展は望めません。学校図書館運営を業務委託等民営化の対象から除外するよう、適切な対応をとってください。

4.国会図書館の書誌データについての周知

  平成24年1月から国立国会図書館の書誌データが、無償で提供されるようになります。各公立図書館、学校図書館等が、現在使用している書誌データから国立国会図書館の書誌データにすみやかに移行できるよう、各図書館への周知を図り、推進するための施策を実行してください。

以上

連絡先 図書館友の会全国連絡会事務局  阿曾千代子
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<添付資料・賛同団体71団体(PDF)


(テキストのHTML化にあたり、読みやすくするため見出しの太字指定および改行を適宜行わせていただきました。また代表者等の住所、連絡先等は個人情報保護の観点から伏せさせていただきました。ご了承ください。要望書の原文はPDFまたはWord文書をご参照ください。)


公立図書館の振興を求める要望書(総務省宛)

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