文部科学省 高井美穂文部科学副大臣 面談報告書

日時  :2012年5月22日(火) 午前11時45分〜12時
場所  :文部科学省 副大臣室
面談者 :文部科学省 高井美穂副大臣
図友連 :福富会長、以下会員5名

 

福富:私たち「図書館友の会全国連絡会」の全国のメンバーは、公共図書館と学校図書館の振興の要望書を毎年出しています。内容については、高井副大臣が国会で指摘されたように、図書館は情報拠点として非常に大事なのに、大変厳しい環境にあります。具体的には、1番目として、「東日本大震災で被災した図書館への支援」を要望しました。被災した図書館の復興には大変苦戦しています。実は明日院内集会において、気仙沼市の白幡教育長と福島県立図書館の吉田専任司書が来られ、色々説明していただき、みんなで何とか支援できないかを考えていきます。色々な側面でやっていただいているのですが、特に「人」の配置ということで、図書館員も他の所への応援とかでなかなか大変だという問題が発生しています。2番目に「公共図書館の振興」、3番目が「学校図書館の振興」ということで要望を分けて書いてあります。

 2番目の「公共図書館の振興」には、小項目としては(1)から(7)まで7項目書いてあります。(1)は「中長期図書館振興政策」です。内容としては中長期計画のビジョンがしっかりしないと困るのですが、ないのが実情ということ。(2)の「補助金と交付金」についてですが、地方税の交付金など色々とやっていただきましたが、やはり資料充実等には足りないところがあり、なんとかさらに考えていただきたい。(3)が一番問題な「指定管理等の民営化の問題」です。これが今回賛同いただいた105団体のリストですが、私たちの会は北海道から九州までずっとあるわけですが、今回賛同団体が長崎と佐賀に多いのは、たまたまTSUTAYAさんと佐賀県武雄市長さんが連携して図書館を運営するニュースがつい3週間前、市民も図書館員も知らないうちに突然ありました。指定管理制度を導入するということです。図書館で何を読んだかの情報も許可を得れば利用し、図書館の利用者へポイント制を導入する、そんなことを考えているようです。私も図書館の自由の原則から考えて、あれっと思いました。詳しくは聞いていませんが、ここ3週間ほど話題となっています。前に「図書館は指定管理になじまない」という見解を出していただきました。直営で頑張っているいい図書館をみならってくれればよいのですが、厳しい図書館環境の中で、民間にまかせてしまえばコストが安くなりメリットがあるという民営化の動きがまだまだあるということを我々としては危惧しているのが(3)のポイントです。

 あとは要点だけお伝えします。(4)は「図書館協議会の設置」です。しっかりとした図書館協議会だと色々な課題はクリアできるのですが、図書館協議会は必置ではありません。置いているところで機能しているところはありますので、必ず設置して住民代表枠を確保することを要望します。色々検討して少しずつ枠は増えているものの、ここを我々は市民参加の突破口として考えたいと思っています。(5)が「ワーキングプアの改善」のことで、働いていても非常勤の人は安いし、民営化してしまうと本当にたたかれて、最低賃金で雇われるような実態があって、まさにワーキングプアの社会的問題が発生しているということが(5)です。

 あと(6)は「郷土資料の電子化」の要望です。郷土資料が大事だということが、今回の震災でも分かりましたし、出来るだけこれをデジタル化して、地域資料や郷土資料を大事にすることで過去を知りながら、未来を作っていくという図書館の本来の姿のためにも予算化をお願いしたい。(7)は細かい話ですが、「県域を越えた資料の輸送費用の無料化」というのは、お金がかかると国会図書館から取り寄せるのを躊躇したりすることが実際あるので、無料化にし、税金の方で負担してもらえればという提案をしています。ここまでは生涯学習の拠点としての公共図書館についての要望です。

 大きな3番目が「学校図書館の活性化」ですが、これについては小項目で3点ばかりあげています。最近、文科省、総務省で頑張っていただき国の予算をつけていただいたり、色々な施策が動いており感謝しています。しかしまだ財源的に厳しいところがあったり、例えば「学校司書」についてせっかく150億付けていただいても地方税交付金なので他の方に取られてしまったり、教育委員会の力が弱かったり、教育委員会の中で学校図書館の力が弱かったりして、せっかくの施策が「親の心子知らず」ではありませんが、首長が頑張ってくれればいいのだが実際は各地で苦戦しているところです。この辺についても実態調査をしながら、ご指導いただけないかというのが(1)と(2)の要望です。(3)は、ぎょっとしたのですが、図書館の業務委託や指定管理に入っている業者から学校に人を送り出すという、学校図書館の運営にも業務委託、指定管理を導入する動きが最近出てきています。そこについてはぜひチェックをしていただきたい。

 最後に大きな4番目が「国立国会図書館の書誌データの活用」です。ジャパンマークが整備されることになって、一応動いてはいるもののまだ実行が十分出来ていないと思われるので、これも文科省の方でぜひチェックをしていただきたい、というのが今回の要望です。

 高井副大臣が今まで図書館の振興に関してご尽力いただいているということは重々分かってはいるものの、現地では、今日は福岡や香川、兵庫から来た者がいますが、色々頑張ってはいるが非常に苦戦しているということをお伝えしたい。国が自治体に対しどこまで言えるかということがありますが、長年の要望を果たせないところについて、国の方でご指導いただけないかというのが我々の率直な気持ちであり、ここに提案をしました。これをできれば文章でご回答をいただければと思っております。

会員:先ほどのTSUTAYAさんの資料です。

会員:図書館の目的と使命、対象は誰かということを本当に自治体に徹底していただきたいということが一番お願いしたいことです。それと子どもにあてた予算を取らないで、交付税措置とかが水道代や道路などに回りますので、未来のある子どもの方から取らないでということを特にお願いしたいです。

会員:教育委員会(教育部)の中に図書館や学校図書館に関心がある職員がいないと、交付金などの連絡がきても、流してしまって取り上げてくれないということが分かりました。文科省からの通達は、教育委員会には非常に大きな力があります。せっかくの交付金が図書館で活かされるように、国からも強く言っていただきたいとお願いします。

会員:色々な情報は逆に市民の方が、交付金が出るということなどキャッチするのが早い。現場の方に聞くとそんなの来ていないよ、調べると来ていました、というようなことがあるので、自治体の方にもっとアンテナを張ってというのですが、折角いただいても期限がきて出せないということも起こっているので、その点も早く通達するように指導していただきたいと思っています。

会員:数年前に渡海文部大臣から指定管理者について発言していただいたのだが、それを巡って今日では、渡海文部大臣がその時言ったのは、ちゃんとスムーズに指定管理者を入れなさいという答弁をしたのだと堂々と言っているところもあるのです。私は文部科学大臣がきちんとメッセージ、それよりもっと進んだというのか、もっと踏み込んだメッセージをぜひ発言していただけたらと強く思っています。それで地方が変わるとは思いませんが、それを見てもう一度考えなおそうというところが当然出てくるだろうと思うのです。そういうところを少しでも増やしていくことが出来るように、ぜひお願いしたいです。

高井副大臣:時間がないので概要的なことですが、ご要望については毎年いただいておりますので、よく図書館の意義、価値、重要性については分かっているつもりでございます。本当に図書館は文化や教育の拠点でありますので、文部科学省としてもう少し支援が出来ればいいのですが、色々な経緯がありまして、できるだけ市民に近いところに任せていくというところで、補助金がなくなって公立の図書館関係は総務省に交付税措置で整備いただいて、一次的には設置義務である教育委員会を含む市町村に頑張っていただくということになっています。本当に市町村によってだいぶ差があるということで、力を入れてくださって理解のある市長さんや町長さんがいればそちらの予算もうまくいくでしょうし、現実的に力を入れてくれないという様なところがあるというのも事実であろうと思います。文科省としても引き続き図書館の価値、意義はできるだけ伝えていきますし、当然交付税措置については総務省にその必要性を言っていこうと思っております。
 
 また、学校図書館に関しては、平成24年度より新たな学校図書館図書整備5カ年計画を策定したり、学校図書館担当職員配置として150億円の地方財政措置を行ったりしながら進めていますので、厳しい財政状況と思いますが、教育委員会にもできるだけこの措置にのっとった形で、子どもたちにとって必要なものですので、きちんとやっていただけるようにお願いしていきたいと思っています。我々の側としても、予算を作り、法律を作るというのが仕事ですから、その部分にきちんと対応できるように頑張っていきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。

 細かい点に関してお答えすることが時間の関係で出来ないので、今日は社会教育課、児童生徒課と個別の案件に関して別室でお話をしていただきたい。いただいた趣旨は分かっておりますが、なかなか何百何千という文科省に関係する文化、スポーツの団体がありますので、1個1個文章に回答するというのは、担当部署も頑張っておりますので、こうした意見交換の中で意を伝えていただき、こちら側もできるだけお答えさせていただきたいということでお願いしたい。

以上


(テキストのHTML化にあたり、読みやすくするため見出しの太字指定および改行を適宜行わせていただきました。また代表以下の面談出席会員名は個人情報保護の観点から伏せさせていただきました。ご了承ください。議事録の原文はPDFまたはWord文書をご参照ください。)

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