地方自治を支える公立図書館の振興施策を求める要望書

平成25年5月28日

総務大臣 新藤義孝 様  
総務大臣政務官 北村茂男 様

 図書館友の会全国連絡会  代表 福富洋一郎
   (住所はホームページ掲載時省略)
  図書館問題研究会    代表  中沢孝之
その他賛同82団体
 

  私たちは、公立図書館の振興発展のために各地で活動を行なってきました。
  今日の公立図書館の環境は、地方公共団体の財政状況の悪化により、資料費や人員の削減ばかりか、指定管理者による民営化など、コスト削減を目的とした効率化が進行しています。図書館運営の責任放棄のみならず、官製ワーキングプアと呼ばれる人々を大量に生み出し、自らが「格差社会」を拡大する状況となっています。
  この先の分からない不安な空気が社会に広がっているなかで、ひとりひとりの人間が自ら考え判断する力を持つことが、新しい社会を切り開く原動力になると考えます。その根源となるのは学術であり、迂遠であっても、知力、文化力、技術力といった基礎的な力を身につけた人間が育つ環境を整備する以外には方策はありません。また、このことが民主主義社会を支えることにつながり、わが国の繁栄にもつながるものと考えます。
  そのためには、公立図書館が地域の情報拠点としての役割を果たすために国が果たすべき役割は大きいと考えます。私たちは図書館の重要性を全国に発信すること、そして全国の図書館づくりを支える施策を実施することを願っています。
  貴省は平成22年12月28日「指定管理者制度の運用について」の通知を発出され、平成23年1月5日の記者会見において、「公共図書館は指定管理になじまず、行政が直営で、スタッフを配置して運営すべきだ」と片山総務大臣(当時)が発言されました。22年度補正予算で、司書の確保や図書の充実、図書館の増築を対象に入れた「住民生活に光をそそぐ交付金」を措置し、24年度予算に「住民生活に光をそそぐ事業」を地方交付税として予算化されました。また、24年度予算で、学校図書館担当職員(学校司書)配置にたいする財政措置の新規実施をはじめとして、学校図書館図書整備5か年計画の拡充継続の財政措置など、学校図書館振興施策の予算化にも尽力されました。
  公立図書館の振興のため以下要望いたします。ご多用のところ恐縮ですが、6月末日まで図書館友の会全国連絡会代表に文書でご回答をお願いします。

要望事項

1.東日本大震災の被災地域の図書館に対する支援策の実施

  大震災から2年が経過しましたが、マスコミなどを通じて、まだ復興には程遠い現実が報じられています。貴重な地域資料、郷土資料も多く損傷したままにあると思われます。日を追って回復は困難を増します。
  私たちは、図書館が一刻も早く復興し、地域の生活情報の拠点として、地域の人々を支える中心となって活動することを願っています。関係機関や市民と連携をとり、復興政策のなかに図書館の設備や蔵書の復旧はもとより図書館で働く人々の雇用確保等の財源を配慮し、支援策を強力に実施するよう要望します。

2.補助金・交付金等措置の実施

  平成22年度補正予算「住民生活に光をそそぐ交付金」以降、総務省が公立図書館振興予算を措置していることを、私たちは高く評価します。
  公立図書館が効率的に機能するために、司書館長・司書職員の配置を要件とする、図書館建設及び資料費等への補助金・交付金等の措置をしてください。

3.指定管理者制度、業務委託等民営化に関する調査の実施

  22年末の総務省通知「指定管理者制度の運用について」にもかかわらず、公立図書館、学校図書館への指定管理者制度導入等が各地で問題を起こしています。指定管理者制度ばかりでなく、業務委託、市場化テスト、事業仕分け等による図書館運営の民営化も同じです。
 22年、私たちが要望した「図書館の民営化に関する調査」に対して、総務省は「各地方公共団体に対して、委託を行う事務事業について行政としての責任を果たすよう、選定基準の策定、情報公開による透明性の確保など、選定過程における留意事項等について必要な助言を行っているところである」と回答されました。しかし、総務省の助言は無視され、住民には十分な説明がないまま、コスト削減を目的とした民営化が各地で進み、導入後は企業秘密を理由にして図書館運営の実態は明らかにされない、という状態です。
 総務省が24年11月に公表した「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」(総務省自治行政局行政経営支援室)には「図書館」の項目はありません。「県・市民会館、文化会館、博物館、自然の家、海・山の家等」と内容が示される「文教施設」に図書館は含まれると思われます。せっかく情報として収集しても、「文教施設」に一括されたのでは図書館の実態が把握できません。図書館のみの調査結果を公表してください。

4.県域を越えた資料郵送費の無料化の実現

  図書館利用者が、他の図書館から図書資料を入手する場合、現状は県立図書館が中心となって県域の資料搬送を受け持ち、県内の資料流通システムが作られています。しかし、県域を越えた場合は、借り受ける図書館が送料を負担しますが、予算が無いので利用を断わったり、利用者に経費を負担させたりすることがあるなどの問題が起きています。
  誰でも必要な資料を無料で、貧富の差なく利用できるよう、県域を越えた資料流通に必要な郵送費等を国の政策で無料化してください。また、このことについて、文部科学省、国立国会図書館とも連絡調整をおこなって進めてください。

以上

連絡先 図書館友の会全国連絡会事務局
(担当者住所電話はホームページ掲載時省略)

<添付資料・賛同団体82団体(PDF)


(テキストのHTML化にあたり、読みやすくするため見出しの太字指定および改行を適宜行わせていただきました。また代表者等の住所、連絡先等は個人情報保護の観点から伏せさせていただきました。ご了承ください。要望書の原文はPDFまたはWord文書をご参照ください。)

 

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