すべての人びとに読書を保障し、資料・情報の確実な提供を
保障する図書館を実現するための政策について伺います
(図書館政策についての質問と回答)

2010年7月
 社団法人日本図書館協会
図書館友の会全国連絡会

 国政に対するご精励に敬意を表します。このたびの参議院選挙に際して御党は、各分野の政策、マニフェストを公表しておられます。政党が、豊かで安全安心な国民生活実現のための見解や国政のあり方、方向を示されることは極めて重要なことであり、旺盛な政策論議を期待するところです。
 私ども、社団法人日本図書館協会と図書館友の会全国連絡会は、図書館の振興が豊かな国民生活の実現に不可欠であるとの立場から、御党に図書館政策の具体的内容をお尋ねしたいと思います。参議院選挙に際して示された各分野の政策、マニフェストの精神、考え方にもとづいた回答をお願いします。
 昨年の総選挙に際しても同様のお尋ねをいたしましたところ、私どもの考えを概ね肯定的に捉えていただき、私どもは勇気づけられ、大いに参考にさせていただいたことを申し添えます。
 本年は国民読書年です。「政官民」挙げて「あらゆる努力を重ねる」との国会決議の実現は、その基盤を整備することにあり、また図書館振興の具体的内容を示した図書館法が制定されて60周年の年でもあります。
 以下に、図書館振興の課題、現場が直面している課題の主要な点について、私どもの考えを述べます。それに対するご見解をお示しいただきたいと思います。選挙の最中、ご多用のところ大変恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
 いただきましたご回答は広く図書館関係者、および図書館運動に携わっている人たちに伝えるとともに、私どもの今後の取組みに生かしていきたいと思います。

[質問した政党は民主党、自由民主党、公明党、日本共産党、社会民主党、国民新党、みんなの党。回答の掲載は到着順。]

民主党
 すべての人々に読書を保障し、資料・情報の確実な提供を保障する図書館の実現という方向性を示すことは重要な課題と考えます。
 「2010年国民読書年」にあたる今年、読書活動の推進に資する取り組み拡充すべきと考えております。活字離れが危惧され、学校では読書活動の推進に取り組むところも増加しています。しかし、読書活動の推進に大きな役割を果たす図書館の状況は、学校図書館について整備計画の目標達成率も低く、また、公営図書館等も厳しい状況に置かれています。「2010年国民読書年」にあたる今年を機に、今後のより良い図書館の在り方と整備方策を検討し、各図書館の充実に向けた新たな取り組みを始めたいと考えます。

日本共産党
 貴団体の図書館振興のご尽力に敬意を表します。図書館の具体的な課題を挙げ、政府や国会議員、各政党に旺盛に要請の取組みをされていることは大変貴重なことであり、私どもも大いに学ばせていただいております。ご質問には、公共、学校、大学などすべての図書館が現在、深刻な実状にあることを具体的に明らかにしておられます。我が党も同様の認識をもっており、政府に対しては図書館の基礎的な条件整備を施すことの重要性を指摘してきました。OECD諸国との比較による教育費は日本が著しく低位であることが明らかになっております。
 図書館分野においてはこれに加えて、「構造改革」政策により民間企業にその事業を委ねる方向が推し進められています。その結果、司書など図書館専門職員が安定してサービスに専念できなくなる一方、営利目的の企業に図書館事業を「開放」する状況がうまれています。これらは国会が全会一致して採択した国民読書年の理念にふさわしくない事態と指摘せざるを得ません。このことを述べたうえで以下、ご質問に回答いたします。

1 市町村立図書館を整備すること
 平成の大合併を経た今日でも図書館のない市町村はなお3割近くあります。過疎地域では6割近い市町村に図書館がなく、また書店もありません。人口比較でみると日本の図書館設置数はG7中最低であり、各国平均の半分以下です。図書館は住民の身近な生活圏域、おおむね中学校区に1館は必要であると考えております。これが実現すると人口当たりではやっとG7各国の平均に到達することになります。
 その実現を図るために、@図書館法第20条が政府に課している図書館整備の補助事業を実施すること、A過疎地域自立促進特別措置法に基づく過疎債を活用して図書館整備を図ること、B各省庁の公共施設整備の補助事業の対象に図書館事業を加えること、など現行制度を活用した施策をまず実施すべきだと考えております。

 【質問】 中学校区に1図書館設置することを早急に実現すること、および図書館整備について政府としての具体的な施策を実施することについて、お考えをお尋ねします。

国民新党
 図書館設置増加の趣旨は良く理解できましたが、今後十分に調査検討致したいと考えます。

自由民主党
 公立図書館は、地域における生涯学習推進のための重要な拠点となっていますが、町村における設置率は依然として低く、市においても中学校区に1館などきめ細かい整備が進んでいるとはいえず、その機能が十分発揮されているとは言い難い状況です。
 わが党は野党になりましたので、政府としての具体的な施策を立案する立場ではなくなりましたが、議員立法や国会質問を通じて図書館の振興を図っていきたいと考えております。その一つの例として、わが党主導の議員立法により3月に過疎法を改正し、特別地方債(過疎対策事業債)の交付対象事業に、図書館法の公立図書館が新たに追加されることになりました。このように、今後とも図書館の整備に取り組んでまいりたいと思います。

日本共産党
 日本共産党は、90年代当初から、日本の図書館が国際的に大きく立ち遅れていることを、G7各国との比較を挙げ、国会でとりあげてきましたが、その事態は変わっておりません。私たちは参議院選挙にあたっての「各分野の政策」において「日常の生活圏域に図書館を設置」することをかかげており、中学校区を単位に図書館を設置することは適切な目標です。これを国としての整備基準とすることを求めていきたいと考えます。
 当面の具体策として、ご指摘のあった三つの点の実施は私たちとしても賛成です。今回実現した過疎債活用のほか、離島対策や各種の特別財源をその対象にすることを実現させるよう取り組みます。図書館法に明記されている図書館整備の補助事業を実施させるとともに、各省庁の施設建設の補助事業を図書館整備にあてるよう取り組みます。
 さらに本格的に図書館増設にとりくむには、図書館関連予算の抜本的な増額が不可欠です。私たちは、@軍事費や公共事業の浪費などムダ遣いの徹底した一掃、A大企業・大資産家への行き過ぎた減税をただすことや所得税の最高税率等を元に戻すことで、当面7兆円、景気回復後には12兆円の財源をつくる政策をかかげています。その財源によって図書館建設を計画的に進めたいと考えています。

2 公立図書館に専任の司書を配置するとともに、館長には司書有資格者を発令すること
 公立図書館で働く職員の6割が非正規雇用の職員です。司書有資格者は5割に過ぎず、司書有資格者のいない図書館が4割近くもあり、また司書資格をもつ館長は2割に過ぎないなど、図書館は極めて脆弱な職員体制で運営されております。一昨年の国会審議で文部科学省もこの実状を認め、「多様化、高度化する利用者のニーズに対応する専門性を備えた司書の配置」を自治体に期待する答弁をされましたが、政府自らがその改善を図る施策の実施については明らかにしませんでした。図書館法は図書館に司書を置くことを求めています。図書館運営の根幹に関わる職員体制については自治体まかせにせず、政府はその促進を図る施策を実施すべきです。非常勤、臨時、派遣の雇用にある職員の専門性を高めるための研修などを保障し、また何よりもその安定的継続雇用が必要です。正規雇用の司書有資格者には司書として発令し、図書館業務に専念できる体制を保障すべきです。
 さらに地域全体の図書館サービス計画の立案、実施の責任者である図書館長には司書資格取得を求めるべきです。
 【質問】 図書館に司書を置くことは図書館法上明確であることを政府は明らかにすること、司書が継続して安定的に職務に専念できる人事管理方策を採ること、非常勤・臨時・派遣の雇用であっても継続的に図書館に勤務出来る措置を採ること、司書有資格の館長を配置すること、などは図書館振興にとって重要なことです。以上について、ご見解をお尋ねします。

国民新党
 御趣旨は良くわかり賛成です。今後、十分に調査検討致したいと考えます。

自由民主党
 公立図書館が地域の知の拠点としての役割を十分に果たすためには、専門性を備えた司書が、多様化・高度化する利用者のニーズに適切に対応して、その知識や経験を十分に発揮することが必要です。司書の配置については、第一義的には設置者である地方公共団体が判断するものであり、それぞれが地域の実情や財政事情などを勘案して、必要な数の職員を配置し、運営を行っており、地方公共団体が、図書館における専門的職員の配置など住民生活に不可欠な行政サービスを安定的に提供できるよう、地方税の充実、地方交付税の増額など地方が自由に使える財源の充実確保について、政府に検討を促したいと考えます。
 また、図書館長には、図書館についての専門的な知識に加え、経営力やリーダーシップ、説明能力などの様々な能力が求められます。その任用にあたっては、多様な観点から人物評価を行い、任命することが必要であり、館長となる者が司書資格を有することも専門的知識の必要性という観点から望ましいと考えます。

日本共産党
 日本共産党は前出の政策で図書館への「司書の配置」をかかげ重視しています。専任の司書の配置は、図書館の役割を発揮するうえできわめて重要な問題です。
 図書館法が司書の配置を求めていることは明らかであり、政府はそれを促進する具体的な施策を実施すべきです。
 公立図書館で働く人々の過半数が不安定雇用にあることは、図書館の管理運営、図書サービスにとって由々しき問題です。また、不安定雇用は労働者の権利のうえでも問題です。非正規雇用職員の期限を限った雇い止めを止めさせ安定的な継続雇用を実現し、労働者の権利を守るとともに、図書館職員の専門性を高められるようにするべきです。非常勤、臨時の雇用にある人の正規職員化をすすめるとともに、労働者派遣法の改正などを図り、非正規雇用職員と正規雇用職員との均等待遇を図ります。
 図書館長は、図書館事業を長期的視野にたって進める責任者であり、地域の読書環境整備に中心的役割をはたす職です。司書有資格の館長を配置するとともに、その業務にふさわしく処遇されるべきだと考えます。

3 指定管理者制度などは図書館の管理運営になじまない
 図書館は金銭的な収益が生じない事業であり、民間企業にその管理運営を委ねる指定管理者制度は基本的になじまないと考えております。図書館は行政が責任をもって実施する公共サービスであり、司書がその専門性を継続して安定的に蓄積できる体制の構築があってできる事業です。文部科学大臣も一昨年の国会審議で「指定管理者制度は図書館の管理運営になじまない」と答弁し、また国会は全会派一致して「指定管理者制度導入の弊害」に触れ、専門職員の配置を基本とする管理運営を指摘する決議を行いました。この5月の国会衆議院文部科学委員会においても文部科学省は、職員の安定的な処遇を確保すること、若手の人材養成も含め長期的視点に立って育成を考えることなどを指摘し、図書館の設置者(自治体)に「熟考」と「よりよい図書館サービスの充実のための努力」を求めました。
 利用者に直接サービスを行う「窓口業務」を民間企業に委託したり、図書館業務を「市場化テスト」の対象にする動きについても、図書館本来のあり方にそぐわないものであり、図書館の内実を損なうものです。
 公共サービスの民間委託について、国会は先に公共サービス基本法を成立させ、自治体においても公契約条例制定の動きが進んでおります。これらは図書館事業の今後にとっても大事な問題提起をしております。

 【質問】 御党は、図書館の指定管理者制度、「市場化テスト」、利用者に接する窓口業務を民間企業に委ねることについて、どのような見解をおもちですか。また図書館の適切な管理運営にとって、公共サービス基本法の具体化や公契約条例は重要なことと考えますが、いかがでしょうか。

国民新党
 規制緩和により、図書館現場の皆さんの御苦労が良く理解できます。公共サービス基本法等の必要性には賛成です。今後十分に検討したい課題です。

自由民主党
 指定管理者制度の目的は、施設管理の費用対効果の向上、管理主体の選定手続きの透明化、出資法人の経営の効率化、民間事業者の活力を活用した住民サービスの向上を図ることにあります。公立図書館の指定管理者制度を導入するか否かは、第一義的には設置者の判断ですが、各設置者において、公立図書館の利用者に対するサービスの充実に資するよう配慮しつつ、指定管理者制度の導入の是非を判断することが重要であると考えます。
 また、本年5月28日の衆議院文部科学委員会での政務官答弁では、指定管理者制度の導入率は、公立図書館において6.5%(203館)となっています。このことから、貴団体におかれましても、指定管理者制度を導入した図書館においては、どのように利用者のニーズに即した運営がなされたのか、指定管理者制度の業務の履行状況についてどのように自治体にモニタリングし、長期的視点に立った人材育成を行えば、より良い図書館として機能できるのかなど総合的な見地での検証を行って頂ければ、図書館全体の振興を図るうえで意義深いものと考えます。
 なお、わが党は、地方公務員の定数削減や地域おける民間賃金同水準になるような給与の適正化、市場化テストの積極的な活用による公共サービス改革の推進など地方行革を推進する事にしており、公共サービス基本法の具体化や公契約条例を検討するとしてもその前提に立つべき、即ち、2008年6月3日の参議院文教科学委員会での文部科学大臣答弁や同年5月23日の衆議院文部科学委員会での「社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」の趣旨は十分踏まえつつ、公務員の既得権を守って官製市場改革を妨げることのなきよう検討すべきと考えます。

日本共産党
 日本共産党は前出の政策で「公立図書館への指定管理者制度導入、図書館運営の民間企業への委託に反対」であることを訴えています。
 図書館業務は教育委員会が責任をもって実施する公共サービスであり、利潤追求を目的とする企業に委ねるべきものでなく、指定管理者制度にも「市場化テスト」の対象にもなじまないものです。利用者に直接サービスする窓口業務を民間企業に委託することは図書館サービスの後退をもたらしかねません。とくに請負契約は「偽装請負」になりかねない側面があります。「官製ワーキングプア」の例として図書館がよく挙げられていることは、早期に解決しなければならないことだと考えています。また住民、議会などとの十分な情報の共有と議論がないまま、図書館の管理、業務を外部化するようなことは、許されるものではありません。
 公共サービス基本法の具体化は、公共サービスを担う労働者の劣悪な労働条件を改善し、公共サービスの質を高めるうえで重要なことだと認識しています。図書館事業も対象とした公共サービス基本法の具体化について政府に問いただすとともに、自治体の公契約条例制定の促進を求めていきます。

4 図書館協議会を設置し、住民の意向が反映した図書館運営をすること
 地域の拠点としての図書館の役割は、その地域の住民の意思が運営に生かされてこそ実現するものと考えています。そのためには、図書館法第14条に規定された図書館長の諮問・意見具申の機関である図書館協議会を設置し、その目的に沿った働きを発揮することが現在とりわけ重要だと考えています。例えば指定管理者制度など図書館の管理運営に関わることついては、利用者、住民の意向を訊くことなく導入されることが少なからず見受けられます。図書館計画や活動実績など、図書館にかかわる情報を積極的に公開し、住民の意見を聞き、それを図書館運営に反映させる仕組み、制度を築いていくことが今求められています。

 【質問】 図書館協議会の設置し、住民の意向を反映した図書館運営を実施することについて、どのようなご見解をお持ちでしょうか。

国民新党
 図書館協議会の設置し、住民の意向を反映した図書館運営には賛成です。(現状はどうなのか検討したいと思います。)

自由民主党
 図書館協議会の設置により、多様な観点からの様々な議論が喚起され、図書館の運営が常に地域の住民に公開され、評価される事になれば意義深いと考えます。

日本共産党
 図書館協議会の設置は当然必要なことと考えます。全国的にみて7割に満たない設置率の状況の改善を図るべきです。政府は、県の地方交付税の積算には図書館協議会委員の設置を入れておりますが、市町村にはありません。これを改善し、協議会設置の促進を図るべきです。

5 地方交付税の積算内容を図書館サービスの進展に即して改善すること
 地方交付税は自治体の一般財源ですが、その積算内容は行政の最低水準を示す側面をもっています。図書館についての現行積算内容は、実態と非常に乖離しています。コンピュータシステム、資料の相互貸借の経費のほか、市町村の図書館長の給与費、図書館協議会委員の報酬を積算するなど、改善を図るべきだと考えています。

 【質問】 地方交付税を以上のような最小限不可欠な積算内容に改善することについて、お考えをお尋ねします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 公立図書館については、職員の給与費及び図書購入費などが、基準財政需要額の単位費用として計上されています。地方公共団体が、図書館の設置・運営などの住民生活に不可欠な行政サービスを安定的に提供できるよう、地方税の充実、地方交付税の増額など地方が自由に使える財源の充実確保について、政府に検討を促したいと考えます。

日本共産党
 地方交付税の積算内容をご指摘のとおり改善することは当然のことであり、そのように求めていきたいと思います。
 同時に政府が「地域主権」の名のもとに、地方向け補助金の「一括交付金化」と福祉分野を含めた国の最低基準の緩和・撤廃を進めようとしていることにつよい危惧を感じています。ナショナルミニマムを示さないで自治体に財源の運用を任せてしまうことは、図書館振興をふくめ住民の生活基盤強化につながらない結果となるおそれがあります。

6 政府刊行物や地方公共団体の刊行物を公立図書館に無償、かつ確実、迅速に提供すること
 図書館法第9条は、政府刊行物および地方公共団体の刊行物を図書館に提供することを課しています。行政の情報公開に資する極めて重要な条項ですが、政府刊行物については十分に行われていないことが明らかとなり、文部科学大臣は一昨年の国会で、無償で提供するなど改善に努力する旨答弁しました。しかし日本図書館協会の調査によれば、官報、法令全書、白書、指定統計など主要な政府刊行物の3分の2以上は購入によっております。
 政府刊行物は確実、迅速に図書館に届ける仕組みを政府自ら制度としてつくるべきです。それによって国民が政府の公的な資料に接する機会を広げることができます。

 【質問】 図書館法第9条の規定に則り、主要な政府刊行物が図書館に確実に届く仕組みを政府がつくるべきだと考えますが、これについての見解をお尋ねします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 図書館法第9条に関し、刊行物を発行する省庁及び地方公共団体の理解、協力を求めながら規定の趣旨の実現に向けて、政府に検討を促したいと考えます。

日本共産党
 政府情報の公開は、国民の知る権利を保障するうえで必要なことであり、民主的な行政運営の基本に関わることです。国の立法、行政、司法のすべての機関は、その刊行する資料を、図書館の求めに応じて提供すべきです。刊行した機関が、自らの責任で迅速、確実に図書館に直接送付する仕組みをつくるべきです。またこれは公共図書館だけでなく、学校や大学の図書館なども対象にすべきことです。

7 県域を越えた図書館資料の相互貸借の経費は政府が負担すること
 図書館活動の進展、インターネットによる資料検索の普及により、図書館間の資料の相互貸借はますます拡大しております。公立図書館の資料の相互貸借は年間200万件を越えており、大学図書館との相互貸借も4割近い公立図書館が実施しています。しかし財政難から、この流通経費が捻出できず、利用者からの資料要求を断る事態が生じています。
 県内図書館間の流通については県立図書館が担うべきことですが、県を越えた流通については、その公益性に則り国が担うべきです。

 【質問】 県域を越えた図書館資料の相互貸借の事業は国が担い、そのための仕組みや財政負担の方法を検討すべきだと考えますが、ご見解をお尋ねします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 県域を超えた図書館間貸し出しのための図書館資料搬送料についても、地域の実情により、受益者もしくは図書館が負担すべきものと考えておりますが、ご指摘の事情も踏まえ、経費を政府が負担することについて、政府に検討を促したいと考えます。

日本共産党
 図書館資料の全国的な流通を保障する責任は政府が担うべきです。利用者や図書館にその経費を負担させるのではなく、政府は、図書館関係団体と連携して、その合理的な仕組みをつくるべきだと考えます。

8 学校司書を配置すること
 学校図書館に学校司書を配置している学校は4割以上となり、増加しています。学校現場や保護者の要望に応え、自治体が施策として実施していることで、大いに奨励されるべきです。ところが政府は、これに対する具体的な支援措置をまったく採っておりません。
 学校司書が配置された学校では学校図書館の働きが生まれ、その活用による教育活動が始まっています。しかし、学校司書の多くは非常勤職員、請負契約による派遣など継続性や専門性が発揮できない雇用条件で仕事に従事しており、せっかくの教育活動が継続できない事態も起こっています。学校図書館の専門業務を担うにふさわしい雇用となるよう改善を図るべきです。

 【質問】 学校司書の配置についてどのような見解をお持ちですか。お尋ねします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 学校司書は、各地方公共団体において、その実情に応じて配置されています。学校司書の配置については、各地方公共団体の実情に応じて判断されるべき性質の事項です。
 学校図書館の運営に当たっては、校長のリーダーシップの下、司書教諭が中心となり、教員や事務職員、ボランティアが連携・協力して運営し、それぞれの立場から学校図書館の機能の充実を図っていくことが重要であると考えます。

日本共産党
 日本共産党は、前出の政策で「学校図書館に専任の学校司書を配置し、蔵書と機能を充実させる」ことをかかげています。
 学校司書は、子どもたちの読書や調べることへの支援、教員の豊かな授業づくりなどに資する専門的な職務を担っています。学校司書の配置により、学校図書館が機能する結果を得ていることは全国の実践により明らかです。
 学校図書館に専任の専門職員を配置し、その専門性にふさわしい位置づけを図る取組みは、自治体まかせではなく政府としても職員定数改善などを通じてその責任を果たすことを求めたいと思います。

9 11学級以下の学校にも司書教諭を発令すること
 学校の規模にかかわらず、すべての学校に司書教諭が発令されるべきです。また司書教諭がその職務に従事できるよう授業時間数等の軽減措置を行うなど条件整備を図る必要があります。

 【質問】 11学級以下の学校にも司書教諭を発令すること、およびその職務に従事することができる措置を採ることについて、見解をお尋ねします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 司書教諭は、学校図書館法上、12学級以上の学校には必ず置かなければならないとされています。そのため、まずは12学級以上の学校に司書教諭の配置が定着し、その役割を十分に果たすことが重要であり、引き続き、発令の促進が図られるよう努めていくべきものと考えます。
 また、司書教諭の負担軽減については、各学校の校務分掌上の工夫などにおいて対応していくことも一つの方途であると考えます。

日本共産党
 11学級以下の学校においても司書教諭を発令するところは増えています。この促進を図るとともに、定数増並びに教育に直接関係のない不要不急の業務の見直しをすすめ、学校図書館業務に専念できる時間の保障できるようにすべきだと考えています。

10 学校図書館の資料費を増額すること
 文部科学省の地方教育費調査によれば公立学校の図書購入費は年々減少しており、2007年度決算では197億円と1993年度の水準に落ち込んでおります。地方財政改革のもと、学校図書館の資料費に充てることが極めて困難になっております。政府には、資料費が学校図書館に確実に措置される施策の実施が求められます。
 また学校図書館図書標準は、新規受入図書冊数を基準に加えるとともに、高等学校も対象とするなど現場に役立つ豊かな内容に改正すべきです。

 【質問】 学校図書館図書標準は、新規受入冊数を基準に加え、高等学校図書館も対象にするなど改正すべきものと考えますが、どのような見解をおもちでしょうか。お尋ねします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 「学校図書館図書標準」は、公立の義務教育諸学校において、学校図書館の図書の整備を図る際の目標として設定したものであり、学校図書館図書整備5か年計画を策定し、図書標準を達成するため予算措置を講じているところです。
 よって、まずは図書標準達成に向けた取組の充実が重要であると考えており、政府に検討を促したいと考えます。

日本共産党
 学校図書館図書標準が設定されて16年がたちましたが、蔵書冊数のみの基準では不十分であり、現状との乖離をふまえて見直すべきと考えます。蔵書の質を考えれば、新規受入冊数を基準に加えることは適切なことと思います。また図書に限定することなく、新鮮で利用できる図書館資料にもわたる内容とし、高等学校も対象とすべきです。それを踏まえた地方交付税措置を求めます。

11 大学図書館など高等教育機関の図書館の資料整備に関わる経費増額の措置を採ること
 大学図書館など高等教育機関の図書館には、紙、電子媒体を問わず高度な学術・専門資料の購入維持、学生用資料の確保などのほか、貴重書の保存、その電子媒体変換を可能とする経費の措置が必要です。それら経費に充てられる国からの国立大学の運営費交付金、私立大学への助成金は年々削減され、公立大学への交付金は「地方分権」を理由に廃止されています。これに応じて図書館資料費が削減されている状況にあり、2008年度決算をみると総額746億円で、2000年度の水準にもなっていません。電子ジャーナルの価格は毎年5%程度上昇する状況もあって資料費の2割を占めるほどになっています。今後のさらなる上昇も予想され、大学図書館の収書に影響をもち始めています。
 大学図書館の資料・情報提供機能は、研究者、学生の研究、学習活動の基礎的基本的営為を支えるものです。

 【質問】 国からの国立大学への運営費交付金、私立大学への助成金を増額し、公立大学への財政措置により、図書館資料の充実につながるようにすべきものと考えますが、ご見解をお伺いします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 近年、大学の安定的な教育研究活動を支える基盤的経費(国立大学法人運営費交付金及び施設整備費補助金、私学助成)が大幅な減少傾向にあります。この運営費交付金の中では、例えば大学図書館における文化的・学術的な資料の保存などについて、可能な支援を行っています。
 基礎的経費の減少により、教員数の維持や施設・設備の管理・運用などで、多大な困難が生じていると指摘されていることから、これらの基盤的経費を十分に確保するよう、政府に検討を促したいと考えます。

日本共産党
 日本共産党は前出の政策で、国立大学の運営交付金については「2004年の法人化以降に削減された750億円をただちに回復し、増額をはか」ること、私学助成については「『私立大学の経常費の2分の1を国庫補助』をすみやかに実現」すること、公立大学については「地方交付税の大学経費を引き上げ、公立大学に対する国庫補助制度を確立する」ことを明らかにしています。
 基盤的経費の削減のために、全国の大学の教育研究条件が悪化し、大学図書館でも必要な資料が購入できない、学部段階の図書館がまともに運営できなくなるなど、深刻な実態が広がっています。資料の充実をはじめ、大学図書館の拡充が図られるよう、大学の基礎的な予算を抜本的に増額することを求めていきます。

12 大学図書館に、資料に精通した専門職員の確保と職務に専念できる環境を整備すること
 大学図書館においても、その6割は非正規雇用職員であり、民間企業からの派遣職員によって多くの業務が担われている実態にあります。国立大学図書館業務を市場化テストの対象とする動きもあります。専門的業務に従事する職員の雇止め、短期雇用などによりその専門性の継続が困難な状況にあります。研究者や学生の要求に応えることのできる体制づくりが必要です。

 【質問】 大学図書館に経験豊かな専門職員の蓄積のできる体制が必要だと考えますが、見解を伺います。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 大学図書館において、学術情報の流通・提供、資料の体系的な収集などについて、専門的な知識・技能を備えた専門職としての図書館職員は不可欠であると考えます。このため、各大学の経営・人事の戦略や特性に応じながら、そのような専門職員の育成・配置に適正に対応して行くことが重要であると考えます。

日本共産党
 大学図書館の職員配置は、公立図書館と同様に深刻な問題になっています。また、大学図書館は大学の教育研究にとってきわめて重要な役割を果たす機関であり、予算や人員の削減、大学の自治から切り離すような民営化などは許されるものではありません。予算を増額し、大学図書館機能にふさわしく正規の専門職員をおく体制を確立する必要があります。また、労働者派遣法を改正して正規職員化をすすめるとともに、非正規職員の均等待遇を実現すること、国立大学図書館の市場化テスト導入の動きに抗したとりくみを重視します。

13 日本の出版物市場における公共、大学、学校を合わせた図書館資料費のシェアが10%以上となる資料費を確保すること
 図書館の資料費は公共、大学、学校、それぞれの図書館を合わせてもようやく1,200億円程度で、出版市場の1割にも満たない実状です。視聴覚資料や電子資料、外国資料の購入に充てる額も含んでおりますので、実際に国内出版物の購入に充てられる額はさらに小さい額となります。
 公立図書館の2009年度予算では294億円と1991年度の水準に後退し、1館当たり1600万円あったものが937万円になりました。
 これでは図書館が出版文化を支える、とはとても言えません。図書館が学術書や専門書、地方の出版物を一定程度購入できるようにして、出版を支えることが必要です。
政府には、出版文化の振興の視点からも図書館の資料購入費を措置する政策が求められます。

 【質問】 この課題についてのお考えをお尋ねします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 質問5、10及び11でお答えした通り、地方税の充実、地方交付税の増額など地方が自由に使える財源の充実確保及び大学における基盤的経費の確保について、政府に検討を促したいと考えます。

日本共産党
 公共、学校、大学などの図書館全般にわたって資料費の削減が続いていることは、重大な問題です。出版文化を発展させる観点からも、資料費を大幅に増額することが必要だと考えます。

14 文字・活字文化に接することが困難な障害者の権利を保障する
 情報伝達の主要な媒体である図書等について、障害者は直接「読む」ことができません。それを音訳、点訳などの媒体変換することが必要となります。このたび著作権法が改正され、著作権者の許諾を求めることなく活字資料の音訳等の媒体変換が行えるようになり、障害者が「読む」ことの画期的な条件整備が図られました。
 障害者の状況に応じた多様な媒体変換が必要です。理解しやすい音訳のほか、適切な大きさの文字に変換すること、白黒反転した資料、さらに多様なかたちで「読む」ことのできるDAISYなどを提供する条件整備は極めて不十分です。障害者サービスを実施している図書館は1割に満たない実態があります。経費節減、業務の外部委託のしわ寄せの結果です。
 障害者の権利条約の批准は、図書館が障害者サービスを実施することを課すものです。早急にその条件整備を図る必要があります。それには政府が率先して施策を実施すべきであり、図書館がそのサービスを主要に担えるよう条件整備を図るべきです。

 【質問】 障害者の「読む」ことを保障するために、すべての館種の図書館において、障害者サービスを実施するために国としての奨励策を実施することについて、どのようにお考えですか。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 例えば、平成21年の著作権法改正では、障害者のための著作物利用に係る規定について、障害者の情報格差を解消する観点から、対象となる障害の種類や対象施設などについて範囲の拡大を行ったところです。
 分け隔てなく知識に接することは最も重要なことであり、障害の有無に関わらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重しあい、障害者の自立と社会参加を促進するためにも、文字・活字文化に直接、接することが困難な障害者の権利を保障することは極めて重要と考えており、政府に検討を促したいと考えます。

日本共産党
 障害者権利条約の観点にたって、障害者の読書する権利が「合理的配慮」をもって保障される必要があると考えます。音訳、大活字、白黒反転、点字、あるいはDAISYなど国際的な水準での資料提供などの条件整備が必要です。著作権上の問題をふくめ国民的な理解を得て、多様な媒体への変換の実施をすすめるべきだと考えます。

15 公共的書誌情報基盤を整備する
 国立国会図書館のJAPAN/MARCを日本の標準MARCとして活用できるよう改善を図ることは、図書館事業の進展のうえで重要なことです。JAPAN/MARCが無償もしくは低廉な価格、かつ迅速に提供されることは、とりわけ小規模の図書館や学校図書館の所蔵資料の管理の向上、およびサービスの進展につながります。

 【質問】 国立国会図書館が作成するJAPAN/MARC を迅速に提供し、図書館が活用するだけでなく、国民が簡便に資料を探し出せるよう改善することについて、どのような見解をおもちですか。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 国立国会図書館法にも、第8章に「一般公衆及び公立その他の図書館に対する奉仕」とあり、国立国会図書館の書誌データ整備をさらに充実したものとし、広く国民に利用できる方法を提供することは、法の趣旨にも則したものと考えます。本年3月3日には、国立国会図書館の呼びかけによる「日本全国書誌の在り方に関する検討会議」が開催され、国立国会図書館書誌データの一元化へ実務協議の場を設置することになったと承知しており、実務協議の議論を踏まえつつ、わが党として求められる支援について検討したいと考えます。
 なお、国立国会図書館が作成するJAPAN/MARCには、納本されてから書誌データが作成されるまで数カ月がかかるなどから、民間での使用には向かないとされてきたため、現状では、TRCや取次が各社独自のMARCを作成し、全国の公共図書館の8割以上はTRCなど民間が作成したMARCを購入・使用しているとされており、書誌データの一元化に係る検討に際しては、官業による民業圧迫とならぬよう、留意すべきと考えます。

日本共産党
 国立図書館が国内出版物を収集し、その書誌データを作成し提供することは国際的に確認されていることです。日本における国立図書館である、国立国会図書館が作成しているJAPAN/MARCが一般の図書館などで活用でき国民が簡便に資料を探し出せるよう、関係者の検討を経て改善の措置がすすむことを期待します。

16 政党の政策、マニフェストを公共図書館において提供すること
 最後に、政党の政策、マニフェストの国民への提供について伺います。
 政党の政策やいわゆるマニフェストについての関心が高まっていますが、その現物を閲覧することは極めて困難な実態にあります。公共図書館には時事に関する情報の提供が図書館法で課せられ、また教育基本法にも政治教育を重視する条項があります。図書館は利用者から求められた資料は確実に提供することを任務としており、これに応える努力もしております。しかし公職選挙法により、総務省に届けられた「マニフェスト」は選挙期間中に閲覧に供することはできないとされています。このことは、国民の政治参加を重視する上で妥当でないと私どもは考えております。
 昨年の総選挙の際お尋ねしたところ、ご回答を寄せていただいた政党のいずれもが公共図書館での提供に賛同の表明をされました。大変心強く思い、その後機会あるごとに訴えてきました。

 【質問】 このことについての見解とともに、御党の政策を明らかにした文書、冊子等を図書館に提供することについて、どうお考えかお尋ねいたします。

国民新党
 御趣旨には賛成ですが、財政措置が問題です。今後十分に検討致します。

自由民主党
 昨年の回答と同様に、選挙は国民が主権を直接行使する重要な機会であり、政党の正式な公約集であるマニフェストについては、わが党も様々な方法により頒布に務めておりますが、必ずしも希望する方々に確実に入手でき得るものではありません。少なくともマニフェストについては(過去のものも含めて)、公立図書館において国民に閲覧の機会を保障することは、多様な選択肢の中からより良き未来を選択するという選挙の目的に適うものと考えます。
 なお、政党の考えを明らかにした文書や冊子などの提供については、通常、政党は機関紙誌を発行しておりますので、図書館に対して提供は可能と考えますし、マニフェストと同じく一般国民にとって必ずしも入手が容易な資料ではありませんので、国民に対する情報提供という観点からも有意義と考えますが、政党により提供する・しないの対応の差が生じることも好ましくないため、まずは各党の話し合いが必要と考えます。

日本共産党
 公職選挙法によって、選挙期間中に「マニフェスト」などが図書館で閲覧を制限されていることは、国民の知る権利を制限し、国民の政治参加を妨げるものです。日本共産党は、すべての政党、政治団体の政策や主張を明らかにした冊子、機関誌などが図書館において閲覧できることは民主政治にとってきわめて重要な問題であり、ただちに実現すべきことだと考えます。


(テキストのHTML化にあたり、読みやすくするため見出しの太字指定および改行を適宜行わせていただきました。質問および回答の原文はPDFまたはWord文書をご参照ください。)


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